成人式の思い出

成人式。全く、那覇市の連中には参っちまうぜ。
新成人のみなさん、おめでとうございます。
成人式はどうでしたか。
俺は成人式に出た事がない。わざと出なかった。浪人していたから。


一週間後にセンターが迫っていたので、出るにも出られない。一浪目に千葉大を蹴っていたので(いつか機会があれば書きます)、それで、センター前に遊んでいたら親にあわす顔がなかった。
でも、俺は、当時とっても成人式に出たかった。
わざと出ない、って人もいるけど、俺はとっても出たかった。
だって、成人式って、人生で一回しかないじゃん。
俺は人生で一回と言う言葉に非常に弱い。
同じ理由で、実は浪人という身分には、俺は高校の一年のときから結構憧れていた。
なぜなら、当時浪人は人生で一度しかない、身分のある自由だと思ったからだ。親の迷惑なんて考えもしなかった。
人生に一度。
なんて、甘美な響き。
でも、本当の理由は、高校の時好きだった女の子の振り袖姿が見たかったって事もあるんだけどねー。
憧れていた浪人のせいで、俺はそのチャンスを棒に振ってしまった。
でも、それにしても、俺のいた那覇市の成人式は、毎回毎回本当に異常だった。
俺が高三の時。
俺の通っていた予備校の沖ゼミは、那覇市の中心街である国際通りのすぐ近くにあった。
その日俺は、自習室で勉強に疲れた後、ファミマに食べ物を買いにその通りに出た。
すると、たくさんの改造車が流れ込んで来ていて、ヤンキー達が窓から身を乗り出してラッパを吹いていた。パラリラパラリラ?ってやつだ。
マジ、うるさい。
自習室に帰っても、まだラッパは鳴り止まず、うるさくてうるさくて仕方がない。ほんとに勉強どころじゃないのだ。
その夜、俺が見た光景が、ニュースステーションなど全国放送で流れていた。
目の前で起きた出来事が、ニュース番組内でブラウン管に映る不思議な感覚。正直、なかなか面白い。
ところが、しばらくしてあるうわさが流れた。もしかしたら那覇市の成人式がなくなるんじゃないか、というものだ。
当時成人式に出れなくなるとは微塵も思ってなかった俺は、それだけはあり得ないと思って心配した。
すると、やっぱりあり得ないと思う次の新成人の人たちが何人か立ち上がって、みんで暴走を阻止しようという運動が起きた。
その人達は、具体的に何をやったのかはわからない。でも、結構働きかけはしていたようだ。
ところが・・・・・。
次の年。一浪目。また国際通りは荒れに荒れた。
俺は見に行かなかったけど、また多くの金髪にオールバックの連中が、通りを無法地帯にしていたらしい。
しかし、その1?2時間前に、式典会場の那覇市立体育館では前代未聞の事件が起きていた。
袴を来た大勢のヤンキーのOB(?)たちが体育館を取り巻き、警官隊と衝突。
すると、なんとそこにワゴン車が、警官隊を突破しようと突っ込んで来たのだ。
警官隊がそのワゴン車を必死で食い止め、フロントガラスを割り、中の運転手を引きづり出した。
それはまだ19歳のヤンキーで、車に積まれていたのは、樽に入った大量の泡盛だった。
大事件。
当然、次の年から那覇市主催の成人式はなくなる。
しかし、俺達の代から、那覇市の成人式は各地域ごと、中学校単位でやる事になった。
おれはそれ聞いて、ぶっちゃけそっちの方が楽しそうだと思った。だって、ほとんど知り合いだもんな。久しぶりに会う連中もいるだろうし。
はい、でも今年は出れませんから。二浪ですから。残念。
奇しくも、俺はその日どうしても受験用の照明写真を撮らなきゃいけなくなった。私立大受験のためだ。
よく晴れた日だった。
しかし、風は強い。
同じ二浪仲間と、重い気分で新成人の来なさそうな写真館に車でいく。
その写真屋さんは俺の母校のすぐ隣にあるとても小さな店で、店内にはやせた優しそうなおじさんと、年老いた犬が一匹。
おじさん「成人の日に照明写真とはまた大変だね」
このおじさんの言葉は、とても慈悲深い響きがあった。少し負い目を持って写真館に入っただけに、ほっとするものがあった。
その帰り。
俺は歩いて沖ゼミまで戻った。
帰り道、どうしても、国際通りを通る。
行くと、やっぱり荒れていた。金の袴に金髪の、全身金ぴかな連中が十名ほど、のろのろ車道を渡って車の通行を妨害し、また例のラッパの車が暴走している。
でも、二年前に見なかったのがあって驚いた。
テレビレポーター。
どこかの本土のレポーターたちが、その騒いでいる連中をバックに必死でレポートしているのだ。
二年前もいたんだろうけど、実際見たのはこのときが初めて。
レポーター「いま、式典を終えた新成人達が、どっとこの国際通りになだれ込んで来ています!」
なんじゃこりゃ!
まるで、台風中継じゃないか
こうやって、みんなに見守られて、この騒ぎも発展していくんだろうな。
嵐のような街を、風に凍えながら歩いて帰ったのでした。
なんて暗いんだ・・・・ギャグにしようと思ったのに、暗い気分のときに書いたら反映してしまうぜ