個人的元旦

だらだら生活している俺は、どこかで仕切り直しが必要だと思い、昨日を俺だけの元旦にしようと思った。


考えてみれば、一年の初め、つまり元旦は、世界規模での気分転換の日といえるのではないかと思う。
みんな年末に向かって気分を盛り上げていって、当日になるとお参りやら初日の出やらおせちやらをやった後、心機一転してそれぞれの仕事に励むことになる。
だから、うまく世の中の流れに乗れば、精神的にリセットすることが出来るわけで、そういう意味で、元旦は非常に大切な日だと思う。
どころが、そんな日を、俺は風邪も引いてないくせに、電気カーペットに寝そべったまま過ごしてしまった。しかもマイナス的なことを頭に浮かべながらである。
うだうだうだうだ・・・・布団の中で転げ回る。
どうしようもない。
おかげで、ここ一週間は目も当てられない有様であった。このままではいかない。
そこで、俺だけの元旦を新たにもうけて、それで気分転換を図ろうとしたわけだ。
元旦なだけに、初詣に行かなきゃ。おみくじもひこう。甘酒も飲もう。
ところが、その前日(つまり1/6大晦日)にスポ兵(サークルでするサッカーのこと)があることを知る。
初蹴りですやん!
俄然テンションが上がる俺。
肝心の当日。体に酒が残っていてあまり早く起きれず。
一時間遅れでグランドに向かう。
前回が絶好調だっただけに、今回も気合いは結構入っていた。
しかし、最初にボールをけった時、右太ももの筋がビキビキという音を立てて、割れるような感覚が走った。
まるで、コンクリートにヒビが生えるような感じである。
さらに、フェイントをしようとすると、ケツの左側から左太ももの裏側にかけて、ビシッと切れ目が入る感覚が。
アウッ
これが、今年最初の初うめき声だ。
足の裏もめちゃくちゃになった。四カ所の初水ぶくれと初血豆が一カ所。水ぶくれのうち二つは割れて、皮がはげていた。初皮はげである。
さらに、初タクミンさんの初スパイクによる初出血と、初ムッシュの膝への初激突によるわずかな初流血。
これらは化膿防止のため、初水洗いしなきゃならん。サッカーが終わった後、水洗い場に行く途中、水たまりが凍っているのを見てビビった。
俺「氷!!」
三村みたいな初突っ込み。
案の定死んだ。足の血管が限りなく収縮して、体内から足を締め付ける感覚。
冷たいんじゃない、痛いんだ!
その後初ジャンボチキンカツを食べて、初満腹。初腹痛を抱えたまま、初ザッキー、初リョウと合流して、三人で初詣に行った。
俺は、今年は年男である。
そして、同時に厄年だ。
それも大厄である。
俺は、この一年間、この事実から目をそらして生きて来た。人前では、『占いなんか気にしねーよ』なんていってるけど、実は、案外結果は気になってしまう方である。
朝は、血液型選手権を見て一喜一憂。
高校の時は、ハンドボール部で怒られないかどうかを、スポニチのゼロ型占いで占おうとしていた。
決してドンピシャで当たるってことはないけど、『アレはもしかしたら当たっていたのではないか・・?』という曖昧な部分が出て来て、それでまた何ともいえず気になってしまうのだ。
そんな人にとって、大厄という宣告は、いかに重大で、ヤバいものなのか。
じゃあ、厄払いすれば良いじゃないって話なんだけど、俺はこの年末散財しまくって、
金がヤバいことになっている。それに、こんな迷信みたいなものに屈服して、金を払うのは馬鹿げてるという気持ちもどこかにはあった。
でも、財布の中には、ばっちり九千円は忍ばせていた。
俺達三人が向かったのは、稲毛の浅間(せんげん)神社であった。
俺は、なるべく大厄のことを考えるのをさけて、お参りした後、おみくじでも引いて、さっさと帰ろうと思った。
ところが、行ってみると、どこかしこに今年の大厄のことが書かれている。
入り口にも。お参りするところにも。おみくじ売り場にも。甘酒売り場でさえ書かれている。
どう考えてもお金の利益目的にしか思えない。俺のような弱者の不安をあおって、祈祷という誘惑の言葉でお金をふんだくろうとしているに違いない。
大体、初めて来たけど、この神社、腹黒すぎる!!
ハローキティーお守りって何よ!!なんでキティーちゃんの人形っぽいものが、お賽銭箱の横に立ってるんだよ!!
しかも、開運甘酒はわからんでもないけど、開運ココアって何だよ!本当に開運カカオからちゃんと作ってんのかよ!!開運つけりゃ良いってもんじゃないぞ!
なんて、気持ち悪い神社だ!こんなに商売商売しやがって。何が大厄だ、こんな嘘くさいもの。こんなんに、金なんか払ってやれっか!
こんなのに金を払うヤツの顔が見たいわ!
・・・・・・・・・・・
・・・・でも九千円以内だったらやってもいいかも・・
だーーーー!!!やっぱり大厄のことが気になる・・・!
やばい・・・どうしてここまで不安をあおって俺の金を取ろうとするのか・・・。
こうなったら、見ないようにしよう。歩くときは、なるべくザッキーとリョウの顔でも見て(きもい)、よけいな情報を頭に入れないようにしよう。
すると・・・・・
アナウンス『今年の大厄は?・・・男は昭和57年生まれ・・・』
なっ・・・!
こいつら放送までしているのか!!
明らかにすり込みである。オウムみたいに洗脳する気か!
ザッキー「厄落とししてきなよ?(にやにや)」
ぐっ・・・
思わず財布に手が帯びそうになった。
しかし、結局厄よけのお守りを買って終わりにした。厄をよけるお守りなのだ。大丈夫っしょ!
・・・・うん、きっと、大丈夫・・・。
家に帰る途中、薬学部の池に氷が張っているのに気がついて、もの凄く驚いた。
ガキみたいに大騒ぎである。石を氷に投げつけて割っては、一人でスゲースゲーと歓声を上げる。
八時頃、もと同居人のヤーボーもやって来て、二人で部屋で飲んだ。
フランツ・フェルディナンドにのせて、静かに流れる夜だった。
今年も、相変わらず俺のままで、行きそうだと思った。
遂に、気分が2006モードに突入。