もやもや感

1.

一昨日のなでしこジャパンの引き分け狙いの試合を見て、10年前のハンドボール部の試合を思い出した。あれは後にも先にもない後味の悪い試合だった。

 

2.

もう10年以上も前の話だから、もう言っても大丈夫だと思うんだけど、ある大会で、僕らハンドボール部は一回戦でわざと負けなきゃいけない状態になってしまった。

僕らの高校は開校当初、「文武」の「武」を完全に捨て去ったかのようなゴリゴリの勉強校にしようとしていた。たとえば、部活は午後18時半まで、しかも二年のインターハイで引退となっていた。また、普通の高校ならないような日にテストを設けることも多かった。そのテスト日の一つが、たまたま大会の二回戦と被ってしまった。特別措置を訴えたけど、もちろん聞き入れてもらえなかった。だから、1回戦で負けるしかなかった。一回戦の相手は、まだ戦ったことのない未知の相手だった。
でも、ただ何もしないで負けるのはつまらない。日頃の練習成果を試すためにも、前半は全力でやって、後半はミスで自滅しよう、というゲームプランを立てた。

ところが、いざ試合が始まってみると、相手がめちゃくちゃ弱いということがすぐにわかった。ハンドボールは何人でも何度でも交代できるので、控えの選手も含め全員が交代しながら試合を進めたが、得点を重ねまくって、気がついたら20点近く点差が開いてしまった。さすがにこれはやり過ぎだと思った。後半はこれをひっくり返されなければいけない。しかも相手に失礼の無いよう、真剣にやっているように見せながら。

それで、後半が始まるとパスミスをしたり、間違った振りして相手にボールを渡したりした。相手が速攻を仕掛けてくるとわざと混乱し、しかも苛立っているような演技をした。チームメート同士で、「何をやってるんだ、ちゃんとしろ」と怒鳴ったりした。時々怪しまれないために点数を入れたりもした。

実は、始めのうちはこの特殊な状況が結構楽しかったりしたんだけど、その気持ちもすぐに消え去り、罪悪感だけが募ってきた。点差が縮まるにつれ、相手チームがどんどん勢いづいてくるのがわかった。相手の控え選手もベンチから「あと10点!」「ここ必死で守れよ!」と声を出していた。そして、ついに5点差になったとき、周りにいた相手選手の親や全然違うチームの選手たちも、「奇跡」が起きるんじゃないのざわざわし始めていた。こちらとしても、残り時間が少なくて焦った。最終的には。キーパーがボールを避ける事態に。そして、ついに、試合終了間際にその「奇跡」の逆転劇を起こすことが出来た。

相手チームの喜びようは尋常じゃなかった。優勝したわけでもないのに、控えがベンチから飛び出して、選手と抱きついていた。

試合後相手チームの控えの選手や監督に礼をしにいくと、そのとき、監督が目にうっすら涙を浮かべていた。

みんながモヤモヤした。
帰り道、一人がこの現状に対して「なんだこれ?」といった。
ほんとだ。なんだこれ。
3.
なでしこジャパンを観ていて、10年前の試合直後の「なんだこれ」って発言を思い出した。変なもやもや感、なんだこれ。
選手全員がきっとこのもやもや感を抱えたと思うけど、でもサッカーの大会のグループリーグ最終戦じゃあ普通にこういうことはある。その後の戦いをより有利な位置で戦うための大事な策だった。

でも、このもやもや感は思い出したくなかったな。

それでも、めっちゃ応援してます。男女ともにサッカー頑張れ。
ただのミーハー日記。

 


今月号の実話ナックルズにイラスト描きました。

今日発売の実話ナックルズにイラストを5点描きました。「俺っトコに恐怖のヤッちゃんがやってきた」という特集で、一般人がヤッちゃんに巻き込まれた実話を集めた特集の挿絵です。

一枚目のこれは、ニューハーフの占い師のところに、トイ・プードルを抱えたイカつい男がやってきたシーンです。初めはこのニューハーフの占い師をかなり男っぽく描いたんですが、もっと女性らしく描いて欲しいとのことで修正を貰いました。いや、でも最近のニューハーフは本当に女性と見分けがつかなくて、すごいですよね。。

 

これは老ヤクザが老人ホームで闇金融を始めたという話の挿絵です。ベッドの上で鋭い眼光の老人のところに、他の住人が列を作っています。隣にタバコを吸いながら立つのはヤクザの姐さん。それにしても老人ホームで闇金融とは。。能力のある人はどこでもお金を生み出しますね。

 

 

パンチ力に自身のあるオラオラ系のお兄さんが、ヤクザにスカウトされるも、ノルマのきついチケット販売を任されるという話の挿絵です。オラオラ系ってこれ描くときに初めて知った。。

 

バーに美人なお姉さんが来たのでナンパしたところ、ヤクザが現れて慰謝料を請求されたという話の挿絵です。やっぱグラサンのお兄さんを描くのは楽しいです。

 

最後は、キャバクラにきたヤッちゃんに、マルチ商法の商品をお客に売るよう迫られるキャバクラ嬢です。

 

最近は南国系の絵ばかり描いていたけれど、こういう絵も描いていてとても楽しいです。今月もかなり危ない内容が満載ですが、もし良かったら手にとって見てくださいね〜!

 

 


Mountain Lionのリマインダーを使ってみた

1.

つい最近、Macの新しいOS「Mountain Lion」が発売されて、僕も早速導入してみた。今回は前回のような派手なバージョンアップではなく、地味な新機能がたくさんついた地味なアップグレードだったけど、それでも、icloudを使ったiphoneやipad、ほかのmacとの連携がめちゃくちゃスムーズになった気がしてけっこう気に入っている。個人的に今回のバージョンアップで一番アツいのは、今バージョンから標準搭載されている「リマインダー」というアプリだ。

 

2.

実は「リマインダー」はiphone、ipadには去年からすでに導入されていたアプリで、ようはTO DO リストだ。やるべきことをこれに書き込むと、チェックボックス付きのリストになる。そして一つ一つのタスクには時間や場所を設定することができる。時間を設定するとその時間にやるべきことを教えてくれる。でも、場所が登録できるのはなぜ?

例えば、駅前の薬局で、ワキのにおいを押さえるエイト・フォーを買いたいとする。でも、わざわざそれだけを買いに行くのはめんどくさいので、駅に寄ったときについでに買えばいいや、なんて考えたりすると、たいてい駅に着いたときには忘れてしまっている。ところが、もしこのリマインダーで駅前を登録していると、駅に着いたときにGPS機能がそのことを感知して、「エイト・フォー買え」とiphoneに通知がくる。これがものすごい便利だ。

でも、実は今まであまり使ったことはなかった。タスクをいちいちiphoneで入力するのはめんどくさかったからだ。タスクを決めて、日付やら場所やらを登録するならば、やっぱキーボードで入力したい。前日の夜か当日の朝に一気にパソコンで入力してしまえばどんなに楽なことか、、なんて考えていたら、新しいOSになって、ついにパソコンにもリマインダーが標準搭載されるようになった。しかも、icloudを通して、自動的にiphone、ipadと共有できる。もう、凄まじく便利になった。

 

3.

僕はこのリマインダーがMountain Lionに搭載されると知ったときから、自分のマネージャーとして活用したいなと思っていた。いつも孤独に作業しているから、たるみ始めるとどこまでもたるむ。だから、優しくムチを打ってくれるような秘書が欲しかった。リマインダーはそれができそうだ。

リマインダーに、はじめにやるべきことを入力していれば、次は何をしてくださいと、マネージャーのようにどんどん指示してくれる。それで今日から使ってみた。今日の最初の仕事はラフを作って送ることだったんだけど、これがなかなか時間がかかってきた。はじめは自分の中で14時に提出しようと考えていたんだけど、それが過ぎて、結局18時に。

当然作業している最中に、次にやろうと思っていたことがリマインダーとして、パソコンの画面右上に変な効果音とともに出てきた。そして次の瞬間、iphoneとipadも同時にピコーンとなり、びっくりしてしまった。それぞれのマシンで、リマインダーの告知が出ていたのだ。同期してるから当たり前なんだけど。。

14時を1時間過ぎ、2時間過ぎて、さらに別のリマインダーが作動する。すると、まだこなしていないタスクも含めて時間が経つ度にピコーンピコーンとなるようになってきた。最終的にはピコピコピコーンとなり、かなりうるさい。うっとうしいので通知を消すんだけど、タスクを完了した訳ではないので、しばらく経つとまた通知がくる。これが、秘書からはっぱをかけられているようで、うっとおしいけどかなり便利、、、

、、、、と、自分に言い聞かせていたけど、何度もやられると、次第に腹が立ってきた。

今も「ブログのイラストを描く」って通知にハッパをかけられているんだけど、精神的に良くない。明日からはもう少し言葉をひねって、「ブログを書くといいと思うよ」とか「今ブログを書くと、今後のためにもいいかもしれないね」って書こうかな。

 


空振りした自己紹介

 

2005年の2月にロンドンに3週間滞在した。高校からの友人である山内真が現地の大学に留学していたので、彼の部屋に泊まることになった。彼はstockwellというところにある、縦に細長いシェアハウスに住んでいた。住人には日本人2人(真のほかにあと一人)のほかに、シンガポール人、台湾人、タイ人が住んでいた。ロンドンに来て初日。僕が初めてこのハウスに来たときは、まだ誰も帰ってきていなかった。

真の部屋に荷物を置いたあと、夕飯を食べることになり外に出た。

夜道を歩いていたら、真が自分の所持金があまり無いことに気がついた。それで、ATMにいくことにした。で、このATMは日本とだいぶ変わっていた。日本だと電話ボックスのようなガラスで覆われた小部屋に入っているのが普通だけど、ここのATMは建物の外壁にむき出しで備え付けられていた。防犯どうなってるんだろう。。

ATMは二台並んで取り付けられていた。真がカードを出して、お金を引き出そうとする。が、なぜかカードが吐き出されてしまった。そこで、隣にある別のATMで引き出そうとする。僕はその横に立って、引き出す様子をみていた。

と、そのとき、真が誰かに話しかけられた。東南アジア系の男だった。気さくに話しかけてきてちらっと僕の方を指差した。すると真がイエスイエスと答え、また英語で切り返す。

僕はそのときの会話はほとんど聞き取れなかったが、僕を指差したり、真が肯定したこと、そして、顔が東南アジアという事実を総合的に判断して、これは間違いなくシェアハウスの住人だと思った。おそらくタイ人だろう。

急に視界が狭まるほど緊張した。でも、出会いは最初が肝心だ。そこで僕は思い切って自己紹介することにした。

“ハーイ!マイ ネイム イズ ヤマザト!アイム フロム オキナワ!”

急な自己紹介に、一瞬東南アジア系の男は驚いたようだが、

”My name is ○○,nice to meet you”

と返してくれた。英語が通じた!あまりに久しぶりの経験だったので、ものすごく興奮した。

”ナイス トゥ ミーチュー トゥー!シン イズ マイ ハイスクール フレンド”

“oh…,really?”

東南アジアな男すごい笑顔になって白い歯を見せて、”That’s nice”と言った。僕は手を差し出すと、彼は握り返してきた。僕は調子に乗って彼の肩をパタパタと叩いた。人種を超えて、世界の人と意思疎通できるって、こんなに快感なのかと感動してしまった。

彼は「もう行かなきゃ」といい、向こう側へ歩いていった。僕は”ハブ ア ナイス デイ!”といって手を振った。向こうも手を振り返してきた。で、しまった、と思った。今は夜やんけ!ナイスデイじゃあないだろ。でもこんな気持ちのいい夜だからいいか。なんて最高な気分だ。。

ところが、横を見ると、真がポカーンとしている。そして、なんで彼に話しかけたのか聞いてきた。え、そりゃあハウスの人だから自己紹介しないといけないだろうと答えると、今度はなんであの人がハウスの人だと思ったの?と聞いてきた。だって、あの人は真に話しかけてたし、俺の方も指差していたし、そして真がそれに対してyesと答えてたじゃないか。

すると真が、そりゃあお前、全然違うぜと言い出した。

どういうことなのか。あの人は真に、隣のATMは使えないのか?と聞いてきたというのだ。俺が壊れたATMの前に立って邪魔だったため、彼はそのATMを利用できなかった。だからわざわざ真に話しかけたのだ。そして指差したのは俺ではなく、俺の後ろにあるATMだった。真はそれに対して、「yes,あれは壊れている」と答えていたのだ。

え、、、じゃああの人はいったいなんだったの?と聞くと、真は全然知らない初対面の人、と答えた。

「お前のいうことに戸惑ってはいたけれど、かわいそうな人なんだなと思ってちゃんと対応してたよ。少なくとも心の広い人だよね」

どこか遠くに行きたかったけどそこはすでにロンドン。人生に逃げ道なし。

 

ということで、今週もよろしくお願いします。

今週はありがたいことにいつもよりちょっと忙しいです。

皆さんもいい一週間になりますように。

 


嵐の中でコンクリートを夢中で叩く

1.

幼稚園の頃から化石や恐竜が大好きで、子供向けの恐竜の本を買っては、毎日読み漁ってた。今の子供がポケモンの名前を覚えるように恐竜の名前を覚えまくって、恐竜博があればそれを見に行った。

ここでさかな君みたいに強烈に化石に詳しくなってたら違ってたのかもしれないけれど、残念なことに、なんかいろいろと勘違いしていた。例えば、あるとき沖縄に恐竜博が来て、そこで売り物になっていた恐竜の骨のかけらがどう見てもただの黄土色の石ころにしか見えなかった。そこから、黄土色の石ころは全部恐竜の骨だと勘違いして、赤土の中に混じっていた黄土色の部分を集めたり、黄土色の石が混じったコンクリートのかけらを集めてきたりした。また、この前書いたカタツムリをアンモナイトと間違えて集めまくっていたという話もあった。

でも、やがてこういう石ころに入った「化石」では飽き足らず、どうしても直接地層から掘り出したくなってきた。どこで化石が掘れるか親に聞いたりしてみた。でも、そういう地層はこの辺りには無いと言っていた。それは博物館でも同じだった。琉球鹿の化石や港川原人の骨といった新しい時代の化石は那覇市やその周辺でも出ているんだけど、アンモナイトといった恐竜と同じ古い時代の化石は沖縄本島の北部までいかないと見つからなかった。小さい僕には絶望的な距離だった。

それで、うーんと悩んでいたんだけど、自分の「化石コレクション」のなかの、コンクリートに混じった「恐竜の骨」を見てハッとなった。この「地層」、すぐ近くにあるじゃないか。

その「地層」とは、家を取り巻くコンクリート塀のことだった。当時住んでいた家は、見た目は一軒家なんだけど、一階と二階で分かれてて、一階は祖父母が、二階に僕らの家族が住んでいた。コンクリート塀はその周りを囲っていた。

試しに家のコンクリート塀に添ってグルっと回ってみると、一カ所、小石がむき出しになっているところがあった。注意深く見ていくと、そのなかに黄土色の石が混じっていた。きょ、恐竜の骨だ。。

慌てて、手に持っていたハンマーとタガネでコンクリート塀を削りだした。コンクリートも固い上に、タガネもハンマーも金属なので、あたりにカーンカーンと高い音が響き渡る。すると、音を聞きつけて祖父が出てきた。何をしていると言われた。今恐竜の骨を見つけたから発掘していると説明すると、お前は馬鹿か、二階に戻れと言われた。

でも、部屋に戻っても、発掘したいという情熱は消えなかった。

 

2.

しばらくして、沖縄本島に台風が上陸した。本島全域を暴風域に巻き込んで2日間大雨やら凄まじい風やらが吹きつけた。窓もガタガタ鳴り響く轟音の中、学校も休みなので家でのんびりしていたら、急にひらめいた。今発掘したら、音が台風にかき消されておじーにバレないかもしれない。

大雨と風の中、ハンマーとタガネを持って階段を下り、その横にある発掘場所に辿りついた。ちょうど家の壁が雨よけになってあまり濡れることは無かったが、コンクリート塀と家の壁に挟まれた通路を、凄まじい風が吹き抜けていた。

ハンマーをふるった時に出るカーンという音は、たちまちゴーーーッと風に掻き消えてしまった。よろめきながら、ハンマーをふるう。でもまだ小さかったので力が弱かった。いくら叩いても、いっこうに掘れない。ちっこい傷がつくだけだった。

そのうち風向きが変わって雨も吹き付けてきた。たちまちびしょ濡れになった。それでも叩き続けた。だけど、コンクリートは子供の力にはあまりにも硬すぎた。体が濡れて、すっかり冷えてしまい、凍えそうになった。これ以上は無理だと思ってきた。というか。もはや、なんでコンクリート塀を叩いているのかもわからなくなっていた。そう、これはコンクリート塀なのだ。薄々気がついていたけど、「恐竜の骨」という夢に浮かれていたのだ。でも、雨にぬれ、風に吹かれ、凍えるような気持ちで叩き続けて、今やっている行動の異常さに冷静に向き合えるようになった。気がついたら僕は泣いていた。

そのとき、後ろの雨戸が開いて祖父が現れた。僕を見るなり驚いて、「何をやっている、入れ」と言った。結局、祖父の家で、お風呂に入り、暖かいお茶と氷砂糖をもらった。

その祖父は二年前に死んだけど、コンクリート塀の傷は今でも残ってる。

 

3.

というわけで、今週もおつかれさまでした。

また次回、日曜日の深夜に。