足音さんの帰還

最近母からちょっと嬉しいニュースが入った。今日はその話です。

うちの実家では不思議な物音がする。二階の僕の部屋で、ベッドに寝そべって本を読んでいると、誰かが階段をギシギシ音を立てて登ってくる。なんとなく母かな?とか思いながらぼんやり本を読んでいるんだけど、気がつくと全く音がしなくなっている。それで変だなと思い、部屋のドアを開けてみると誰もいない。。そんなことがよくあった。

初めのころは、風や家のきしみの音だろと思っていたけれど、階段を登るような音はどう聞いても風の音には聞こえないし、実家のこの家が建って15年も経っていないから、ひとりでに音が出るほど軋むってこともない気がする。考えれば考えるほど音の正体がわからなくなってきて、結局今でも謎のままだ。じゃあ、もしかして、、、とある疑惑が頭をよぎる。

数年前に実家に戻っていた時、不思議な物音のことを母に言ってみた。はじめは「まさか」と母は否定的だったけれど、しばらくして、「言われてみれば確かに階段がから誰かが降りる音がしたけれど、誰もいないってことがあった」と言い出した。この時初めて、不思議な音は気のせいなどではなく確かに存在するって事がわかった。

でも、うちに幽霊が住んでいるという感じは全くしない。人の気配がすることもなければ、誰かの視線を感じることもない。一人でいても全く不気味な感じはしないし、夜遅くまでホラー漫画を読んでても全然平気だ。猫も普通に寝ているし、変な事故が起きたり、誰かが病気になったりするなんてことも全然ない。ただ、変な足音がするだけだった。だから、僕の中で勝手に「足音さん」と呼んでいた。

今年の春、実家に帰った時、母が「そういえばあの音が最近しないんだよ」と言っていた。それで一週間近く滞在していたんだけど、結局、僕も一度も音を聴くことがなかった。足音さんは旅に出たのかもしれない。なんであれ、妖怪好きの僕としては、家から怪異がなくなるのは少しさみしいことだった。

ところが、ついこの間、実家とfacetimeでテレビ電話をしているとき、足音が戻ってきたと母が言った。リビングでテレビを見ていると、二階から誰かが降りてくる音がした、でも、父は仕事に出ているため、家の中には母以外はいないはずだった。まさか、泥棒?ドキドキしながら、リビングを抜け、階段に下までくる。ところが、誰も居ない。階段横のトイレにもいないし、玄関からは誰も出ていないし、他の部屋にもいなかった。そこで初めてこれはあの音だ、ということに気がついた。

足音さんが戻ってきた、足音さんが戻ってきた!

なぜかものすごくテンションが上った。今までその正体に出会ったことも無いくせに、足音が戻ってきただけで何故か嬉しかった。
旅の思い出を聞かせてくれよ、その足のステップで。

8月末に実家に戻る。その時足音が聞こえるのを楽しみにしてる。

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というわけで、今週もお疲れ様でした。また次の日曜日の深夜に。

よろしくお願いします。


茨城に弟と甥に会いに行ってきた

昨日は一日かけて、相方と茨城にいる弟夫婦の家に行ってきた。奥さんはこの日は仕事だったので、弟と甥の二人に会えた。この前は5月に行ったので、三ヶ月ぶり。1歳6ヶ月になる甥のしょうたろうは三ヶ月の間にちょっとだけ大きくなってて、こんな短期間でも成長がわかるのかと驚いてしまった。うちのベランダに植えているゴーヤーとどっちが成長早いんだろう。。

でも彼は僕が抱っこしようとした瞬間に泣きだして、父親にしがみついていた。完全に僕のことを忘れているのか。あるいは僕のことがトラウマになっている、という見方もあるけれど、いずれにしろ悲しい限り。

ところが、甥はなぜか相方にはこころを開いた。しょうたろうがエアコンのリモコンを押すと、相方が目をガバっと開き、もう一度スイッチを押すと今度は閉じる。するとしょうたろうは面白がってなんどもエアコンのスイッチを押す。そのたびにゆやまんは目をぱちぱちする。喜ぶしょうたろう。嫉妬する俺。叔父の俺を差し置いて。。

それで、しょうたろうをガバっと捕獲し、「よーしイイコ、イイコ」と抱き寄せる。するとしょうたろうは泣き叫ぶ。「大丈夫大丈夫だから」と言いながら、膝に座らせる。それでも両手両足をばたつかせて泣き叫ぶ。弟に「もういい加減にやめて。夜泣きで寝られなくなるから」とおこられる。仕方なく僕は手放す。しょうたろうはダッと走りだし、弟の足にしがみついて、涙に濡れた目で恐ろしいものを見るかのように僕を見る。

僕は好かれたくて無理やり抱きしめたんだけど、そのせいで甥に恐怖を与えてしまったようだった。若い女の子を好きになったフランケンシュタインみたいな気分だ。あるいは可愛いネコを抱きしめすぎて背骨を折ったプロレスラーのような。でも相方は上手くしょうたろうの幼い心に入っていった。幼い子どもの目線に立てるか立てないかの差がここに現れたんだろう。

それでも名誉挽回したかったので、しょうたろうの目の前で、相方とクレヨンを使ってアンパンマンやらバイキンマンの絵を描いた。ついでにソファーに置いたパソコンに映るアンパンマンを見る甥の後ろ姿も描いた(上の絵です)。でも、甥はあんまり興味が無かったようだった。

 

それ以降は、しょうたろうはゆやまんには笑顔を見せたけれど、僕を見ると真顔になった。悲しかった。でも、きっと時が僕への恐怖心を和らげてくれるはずだ。甥よ、またリモコンのスイッチを押すときは、こんどは俺が目をかっぴらいてやるぜ。

 


そんな殺生な

大学4年の時、アパートに戻ってきたら、ドアの郵便受けに新聞が突っ込まれていた。日本の2大新聞の一つのY新聞だった。でも僕は新聞を取っていなかったので、配達員が間違えて僕のところに入れたのかなと思った。隣の人に聞いてみようと思ったが、いやいや、せっかくだから貰っておこうと思いなおし、その日はそれを部屋で読んだ。

翌日、大学から戻ってくると、また郵便受けに新聞が突っ込まれていた。さすがに2日連続でもらうのはマズイだろと思って、右隣の人に聞いてみた。ところが、隣の人は、そもそも新聞を取っていないとのことだった。

 

僕の左隣は空き家だった(数ヶ月前まではサークルの後輩が住んでいた)。つまり、僕の両隣も僕と同じく新聞を取っていなかったのだ。
よほどアクロバティックなことでもしない限り、こんな変な配達ミスは起きないだろう。ということは、誰かが意図的に僕の部屋に新聞をツッコミに来ている可能性が高い。

 

新聞が勝手に届くような状態になって一週間が過ぎた。3日目も突っ込まれているのをみるとさすがにゾッとしたけれど、5日目、6日目までくると、勝手に契約したと解釈されてお金を請求されたりするんじゃないかと思い始め、不安になった。

 

それで7日目。近くの営業所に電話して文句を言おうと思った。ところが、その矢先に玄関のドアベルがなった。覗き穴から覗くと、知らないおじさんが立っていた。30代から40代ぐらいに見えた。玄関のドアを開けず、インターフォンで対応した。「どちらさまですか?」
すると、Y新聞です、といってきた。ついに来た。。新聞を受け取ったことで、お金を請求されることを覚悟した。3年前の新聞勧誘の恐怖体験がこみ上げてきた。

 

「あの、、新聞、、いかがですか??」

 

その声は、びっくりするぐらいナヨナヨしていて、弱々しかった。もっと凶暴さを抑えたような、作り笑い的な明るい声を連想していたので、想像とのギャップに驚いてしまった。

 

「さ、三ヶ月でいいんで、、」
「もしかして、いつも新聞を入れていたのはあなたですか?」
「そうです、気に入っていただけましたか?」

 

まじか、本当に、確信犯で入れていたのか。。頭の中では理解していたつもりだったけれど、実際に本人の口から勝手に配達してましたと聞くと、ものすごい違和感がこみ上げてきた。これは明らかに異常だ。
「いや、僕はいりません。そして、今後も新聞を採る気ないので、もう入れないでください」
すると、ショックを受けたのか、彼は泣きそうな声でこう言った。
「そ、そんな殺生な…..!!」

 

「殺生な」と聞いて、絶句した。言葉自体、時代劇以外で聞いたのは初めてで、本当に驚いた。でも、それ以上に、その言葉に込められた悲痛な叫びが、ものすごい鋭利な刃となって胸をえぐった。

 

ひと通り泣き言を聞いた後、僕はインターフォンを置いた。しばらくたって、玄関の覗き穴を見に行ったら、もう中年の男の姿はなかった。

 

彼の「殺生な…!」という言葉が頭に焼き付いて離れなかった。だいたい「殺生な」という言葉が出てくる時点でおかしい。ここからは勝手な想像なんだけれど、彼は末端の人間なのだと思う。おそらく厳しいノルマを課せられていて、今月中に何人分の契約をもらってこい、と言われていたのだろう。もしかしたら、そのノルマを破ると仕事がなくなってしまうのかもしれない。あるいは、上司が3年前の新聞勧誘みたいな人で、精神的に追い詰められているのかもしれない。

 

だいたい、勝手に新聞を突っ込むやり方だって聞いたことがない。たぶん、相当追い詰められて、こういうことをしたんだと思う。どうしても新聞を捌かなきゃいけなくて、どこかで何がなんでもばらまきたかったんだと思う。

 

新聞配達員が去って、働くってなんだろうと考え始めて、こっちも凹んできた。
 一歩間違えたら、世の中は一気に生きづらくなる。

 


新聞勧誘

1.

いまでこそ年齢が1つ2つ違っても大した差はないってのは当然理解しているけれど、大学入りたてはそうでもなかった気がする。それまでは年齢の差=学年の差だった。だから浪人して大学に入って、年下が同じ学年にいるって感覚がちょっとおもしろかったし、変なプライドも出てきた。そのせいで結構恥もかいた。

 

2.

僕は千葉に出てくるまで新聞勧誘なるものに出くわしたことがなかった。
大学一年のとき、近所に年齢は一つ下だけど同じ学年の友人がいた。よく彼の家で、学校やサークル、映画の話をしていた。
ある夜、おしゃべりをしてるとドアベルが鳴った。それは新聞勧誘だった。

友人がその対応に出た。彼の家は玄関のとなりに四角い引き窓がついていて、そこから対応していた。だから玄関は全く開けていなかったが、外の訪問者と話をすることができた。その新聞勧誘は中年の細身のおじさんだった。

新聞勧誘のおじさんは優しい声で「なあ、いいだろう?3ヶ月ぐらいお願いだよ」としつこくせがむ。

それに対して、友人は、「いや、その予定はないですし…..まあ…そうなんですけどね….」と結構丁寧に対応してる。この時は、こういうのを丁寧に対応するヤツだったんだな〜ってぼんやり思って待っていた。ところが、5分たっても戻ってこない。まだ延々と話をしている。

だいたい、勧誘のおじさんは家の中に入っているわけでもないし、いりませんと言って窓を閉めればいいだけなんじゃないのと、だんだんイライラしてきた。すると、不思議な事に変なプライドが頭をもたげてくる。
多分彼はまだこういう訪問販売を断るのに慣れていないんだろう。彼は優しすぎるのだ。ここは一つ、年上であるオレがオトナの断り方というものを見せてやろうじゃないか、と思った。

 

それで、友人に加勢しようと、玄関に向かい、新聞勧誘に声が聞こえるように彼に後ろから声をかけた。

「別に新聞要らないんだったら、スパっと断ったら?」

こんなかんじで言ったら、相手の勧誘する情熱も萎えるだろうと思った。

 

ところが。新聞勧誘のおじさんが、急にドスの聞いた声で文句を言ってきた。

「なんだてめぇ、営業妨害するつもりか、ええ?」

 

・・・・・・・・・・・

 

あまりの声色の変化に驚いてしまった。まるで映画の中のヤクザのような声だ。

「なめてんのか、てめえ、上等だ、出てこいよコラぁ!」

その時、窓越しにおじさんと目があってしまった。見たこともないような恐ろしい形相で僕を睨んでいた。このあまりの豹変ぶりに、僕は完全に「聞いてないよ」状態になって、石のように固まってしまった。足は震えるし、言葉も出ない。

すると、アパートの大家さんが出てきて、どうしたんですか?と新聞勧誘に声をかけた。彼はこの部屋のやつ舐めてるだろとか文句を言い出した。そのすきに友人が「奥の部屋に行っていていいよ」と行ったので、僕はすかさず和室に戻り、ふすまを閉めて、クッションを抱きしめて、ボー然としてた。新聞勧誘に、精神的ダメージを与えようとしたのに、逆にものすごいカウンターパンチを食らってしまった。テンプルに入って脳が揺れたような感じだった。

しばらくして友人が部屋に戻ってきて、新聞勧誘は気をつけないとだめだよ、と言われた。

「特に〇〇新聞はヤクザみたいだってことで有名でしょう、オトナの対応をしなくちゃね」

 

さらに強烈なアッパーカット。

いろんなところで大ダメージ。

 

ということで、今週もよろしくお願い致します。
変なプライドを持たず、毎日謙虚にすごしていきたいところです。
ここに来てくれた皆様もいい一週間になりますように。

「イラストレーター100人LINK」に掲載してもらいました

今週はオリンピックのせいで生活のリズムが狂いまくってずっと体調不良だけど、それでもいろいろ仕事ができて充実していたんじゃないかと思います。ただブログの絵がだいぶ適当になってしまったのがちょっと残念。来週からもう少し時間をつけて描きたいです。

今日は、イラストレーターのサイトのリンク集である「イラストレーター100人LINK」にうちのサイトを掲載してもらいました。早速何人か見に来てくれたようで、すごく嬉しいです!

イラストレーター100人LINK

今後ももっと仕事の裾野が増えていけばいいですね!

 

今日はもう休もうと思います。来週もいつものようにブログを描いていきたいと思います。

今後共よろしくね。

 

ということで、今週もお疲れ様でした。

日曜日の深夜に。