このあいだ、僕は、最近“アジアアロワナ”というファッションブランドを立ち上げた山内真、平良修とともに、ある懇親会に参加してきた。
その会の帰りに、山内真が〆として、あるものを食べに行こうぜと提案してきた。それは地獄ラーメンだった。
それは、那覇市の某所で食べられる、有名な激辛ラーメンだった。
僕は14年ほど前、そこで食べている最中に嘔吐するというひどいやらかしをしたことがあったので、正直あまり行きたくはなかった。その上満腹で食欲もそれほどなかった。でもその時の僕はひどくロンリーな気分だったので、彼らについていくことにした。
僕らは店の奥のカウンター席についた。
席について早々、山内真の様子がおかしくなってきた。
急にそわそわしだし、なにかに怯えるような素振りを見せ始める。
そして、こんなことを言い出した。
さすがに一丁目はしょぼいと説得しようとしたけれど、なかなか話が折り合わない。
僕の案が通り、じゃんけんをすることになった。
その結果、山内真があっさり敗北。
修が1丁目、僕が2丁目、そして山内真が50丁目を食べることになった。
やってきた50丁目は血のように赤く、明らかにおかしな色をしていた。
まずはじめに、1丁目の修が麺を口にした。
山内真はあまりの赤さに躊躇していたが、僕らが食べるのを見て、いよいよ食べざるをえなくなってしまった。
2、3回麺を口にして、恐れていたことが現実になった。
大丈夫かな?と思っていたんだけれど、食べるうちに自分の胃が限界に近づいているということに気がついた。それはすべて、懇親会で調子に乗ってラフテーを食べたせいだった。
しかし、なんであいつらは平気なのに俺だけこんなに満腹なの?
と、心のなかで疑問に思ってみたけれど、その答えは実はかなり明白だった。
ここで話は遡って一時間前。。
僕らが参加していた懇親会というのは、那覇市の国際通りにある観光客向けの居酒屋で、上海から来たバイヤーと、県内の食品業界の方々と酒を酌み交わすというものだった。
僕は上海とも食品業界とも、今のところ全く関係ない人間なんだけれど、ひょんなきっかけでアジアアロワナの二人と一緒に参加することになったのだ。もちろんファッションブランドであるアジアアロワナにとっても食品業界は関係ない。でも、チャンスの前髪はどこになびいているのか誰にもわからない。
セッティングをした県の職員と、県内の食品企業の社員、上海のバイヤーが入り乱れて盛り上がっていた。近くの舞台では観光客向けの琉舞が演じられ、日本語と中国語が入り乱れ、ちょっとしたカオスのような状態だった。
都合で僕だけが遅れて合流し、テンションについていけなかったんだけれど、それじゃあいけないと思い、周りの人に話しかけようとした。人見知りの壁を乗り越え、修と真を通じて参加者に話しかけてみる。
ところが。。
言ってることが全くわからん。
早々にコミュニケーションを諦めた僕は、美味しいラフテーと泡盛に全神経を集中して食べていた。交渉ごとや人との交流が苦手な僕の劣等感を押し流すには、泡盛とラフテーの力が必要だったのだ。
こうして、僕だけが満腹になるという状況が出来上がったのだった。
こりゃ、マジで限界だ。もうラフテーが憎すぎる。。
50丁目の真が苦しんでいる手前、2丁目の僕が白旗を振るのは正直恥ずかしかった。
でも、ここは恥を忍んで、現状を告白することにする。なんせ胃は実際に限界なんだから。
妙にヘコヘコするのも腹立たしいので、さも当たり前かのように、
「お腹いっぱいですけど、なにか?」と開き直って言おう、と心に決める。
一瞬だけ目があったその表情には、無言の圧力があった。
その時、ふと50丁目を食べてる真を見たら、えらいことになっていた。
そう、コレは上手く食事を終了させるチャンスだった。 ここで山内真が50丁目を根性で食べ終えていたら、リバースするまで食うか、「ほんとしょぼいけどすんません」と平謝りして終わるかのどちらかだった。
別に謝ったところで大したことは無いんだけれど、そこは気持ちの問題だ。くだらない見栄の問題だ。でもくだらない見栄が意外と大事なんだ。
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帰り、モノレールの振動で気分が悪くなり、結局首里駅で吐いた。