花見川河口で男の世界 その3

いつまにか寝袋で二時間近くも寝てしまった。午前0時。相変わらず風は強い。さおりんも熟睡していた。
しばらく寒さに凍えて竿を観察していたが、ふと見ると、ザッキーが風の中で遠くを見つめていた・・・。


俺は濡れたジャケットを身にまとってザッキーのところに行った。
ザッキー「川の向こうの景色。右側の海浜幕張のビル郡と、左側の何もない平地の対比が
     すごくいい」
確かに。すごく絵になっていて、カッコいい。暗闇なのに、空はほのかに明るくて、霧状の雲がかかっているのがわかる。そして、その雲のせいで霞がかった月がセピア色にぼんやりと光り、とても美しい。
ザッキー「これをパノラマで撮りたいなあ。それに、あのマンションの明かり。これから
     一軒一軒光が消えていくんだろうね」
風の中で、すっごい渋い話になってきた。
沖縄でズンとザッキーの3人で見た星空の話。鳥取砂丘の話。歌手のUAが見たという、エジプトの砂漠で朝日を見ていた黒猫の話。
もっと世界中を旅して、色んな風景を見てみたい。
ザッキー「そういえば、スティール・ボール・ラン(ジョジョの第七部)の最新刊読ん
     だ?すごくね!?」
俺はまだ読んでなかった。聞くと、前巻の最後に出た敵が『男の世界』というのを大事にしていて、スタンドの名前も『マンダム』なんだって。超カッコいい!!
そこから、俺達は会話の中で何でもかんでもマンダムに結びつけるようになっていった。
俺とザッキーは山田に竿の番を任せて、夜の砂浜に散歩。風が強くて波が荒く、それがかえって渋くてよい。
帰ってくると、山田とさおりんが添い寝。迷わず激写。


散歩の帰り、燃料を入れる系の缶を拾ってきた。これで火を焚いて、寒さをしのげる。時刻はもう4時を回っていた。空も白み始めた。
火をどんどん燃やしていくと、山田がコーヒーを持ってきていると言い出した。そこで燃やした火の上に網を置き、鍋で火を湧かし始めた。
俺「山田?、ミルクと砂糖ってある?」
ザッキー「ばか!!男はブラックじゃないか!!」
俺は目が覚めて、コーヒー豆を溶かしただけのブラックを飲む。まじマンダム。
夜はあけつつあった。マンションの明かりはほとんど消えつつあった。風と波と鳥の鳴き声と燃える音しか聞こえなかった。
さおりんは寝たままだった。
男3人でブラックなコーヒーだった。
男の世界・・・・・・。
(おわり)

火を燃やすザッキー。これで、コーヒーのお湯を沸かす