謎のヤンキー集団

昨日、ずっと見たかった『輪廻』を、遂にザッキーと見てきました。
俺はかなり面白かったよ。あまり期待せず見に行ったら、結構満足できるはず・・。
でね。その中で廃墟のホテルが出てくるんだけど、やっぱり主人公とか、女の子とかが一人でその中に入っていってしまうわけです。
その事は、映画の流れ自体しょうがないわけで、黙ってその後彼女らに降り掛かる不幸を見続けるしかない。
でも、家に帰って、振り返ると、やっぱり思うわけですよ。
やっぱり俺なら絶対に入らない、って。


俺は霊の存在を完全に信じてるかっていうと、そうでもなく、『いたら楽しいのにな?』的なノリ。
しかし、幽霊屋敷となると、やっぱりその雰囲気から見えないものを勝手に想像してしまって、怖くてどうしても一人で入る気がしない。
以前友達と数人で無気味な場所に入っていったけど、大体最初は俺だけ助かろうと一人でおまじないをしている。
そのおまじないとは、地元のある心霊スポットライター(沖縄中の心霊スポットを取材しているライターがいるのです)が悪い気配を感じたときにするもの。
やり方を説明しよう。
手順1 まず、腹に力を入る。
手順2 心の中で『俺は関係ない』ととなえる。
これでおまじないは終了。
・・・・怪しい。
でも、それにもすがりたい気分になるのがお化け屋敷。入り口付近で俺と一緒のときは、彼の腹筋を触ってみるといい。きっと力んで固くなっている事だろう。
一見ばかばかしいこの方法、しかし精神的にはなかなか良い。本当に、霊に対して、俺は関係ないと訴えている気分になるからだ。だから、お化け屋敷探検の後半は、大体俺から先にずんずん前に進んでしまう。霊が襲ってこなくなった気分になるからだ。
しかししかし・・・それでも、俺から進んでお化け屋敷に行こうと思う事は今までも、そしてこれからも、一切ないと思う。やはりたたられたくない。取り憑かれたら、ノリも勢いもないのだ。
そう、俺はなんだかんだでお化け屋敷に自ら突入を志願する事はない。
・・・・・っと思ったら、あった!!
それは、一昨年の夏の事だった。
沖縄にズンとザッキーがやってきて、到着した日の夜に、俺の弟と、俺と彼らの四人でドライブをした。
弟に車を運転させて(おれはまだ免許を持っていなかった・・・)、夜の首里城やら、牧港のA&Wやらに連れて行った帰り。まだまだ遊び足りないなーと思っていたら、思いついてしまった。
俺「ブイ・エフ行かね?」
ブイ・エフは地元で超有名なお化け屋敷。浦添市のラジオ局の隣にあるこの廃墟は、昔ダンスホール(?)だったらしい。
ところが、ある日ここが火事で消失し、廃墟と化してしまった。
それからである。ここで黒人の幽霊が目撃されるようになったのは・・・・・。
『黒人かよ!!』
二人の反応は微妙であった。なんだこいつら。黒人だからって陽気だとは限らないんだぞ。
沖縄には外国人の幽霊が多い気がする。どこかの基地のゲートでは、夜タバコの火を借りに来る米兵の幽霊が出るそうだ。黒人の幽霊が出るって聞いても不思議でもなんでもない。
とにかくブイ・エフに行ってみよう。
俺らは夜中の1時頃、ブイ・エフの前に着いた。
ブイ・エフの敷地は、高いフェンスで覆われ、その上には有針鉄線がしかれていた。
廃墟と化した建物自体は、さらに奥の方にある。こちらからは敷地内のうっそうと茂った木々に邪魔されてその廃墟を見ることは出来ない。
つまり、建物を見るためには、フェンスを越えた後、しばらく木々に囲まれた暗闇の中を歩かなければならないのだ。
忍び込んだのは俺、ズン、ザッキーの3人。弟は車に残るらしい。
その時俺らは偶然にもビデオカメラを持っていたので、それを持って、フェンスの破れたところから中に忍び込んだ。
俺らはひび割れたアスファルトのすきまから覆い茂った雑草の中を進んでいった。
ぶっちゃけ、この時俺の頭に幽霊の恐怖なんて存在していなかった。
なにより、ハブが恐い!
ハブって、ちょー危険なんだぜ!!?
なんで夜中にこんな雑草の中を歩いてんだよ。自殺行為じゃんか!
俺「やべー怖い!」
ザッキー「しー・・・・」
ズン「え・・?なに、なに・・?」
俺「?」
二人の様子がおかしい。しかしすぐわかった。
声が聞こえるのだ。
もう少し進むと、開けたところに出た。おそらく駐車場跡だろう。少し向こうでは、遠くの街灯でかすかに照らされた廃墟がそびえ立っている。で、声は、その奥から聞こえる。
こりゃ、先客がいるんだ・・!
なんか、一気に緊張感が無くなった。
この幽霊屋敷は有名になり過ぎて、楽しみの少ない狭い島の暇な若者達が、昼夜とわず訪れる、一種のアミューズメントスポットと化してしまっていたのだ。
ああ、がっかりだぜ、せめて幽霊のだけでも感じて恐怖を味わいたかったのに・・・
そのときだった。
すぐ近くの暗闇の中から、イッキのコールが聞こえてきたのだ。
激しいなまりと変なかけ声。
間違いない・・・!!
これは、ヤンキーだ!!!
俺は恐怖で青ざめた。俺の友達で、ヤンキーにボコボコに殴られ顔面骨折し、顔が変型してしまたヤツがいる。俺自身浪人なのに国際通りでかつ上げされて、めちゃくちゃ怖い体験をした。
こいつら、人目が着かない事をいい事に、こんなところでたむろしていやがったんだ・・!
幽霊は人を殴れない。
しかし、ヤンキーは・・・・
殴る!!
こええええーーーー!!!!
俺らは一目散に逃げた。ザッキーもズンも。でも、圧倒的に俺はビビってた。沖縄のヤンキーはマジ怖いんだってば。ここで捕まってみろ、誰も助けにこないぞ。誰が幽霊屋敷にまで入ってきて、俺らを助けにくるんだよ!
俺らはフェンスを越え、車に駆け込んだ。
お化け屋敷でヤンキーに恐怖。なんてひどいオチ。まあ、それを昨日『輪廻』を見た後思い出したって事です。
・・・・・・・・
でね、タイトルの『謎のヤンキー集団』の『謎』のところなんだけど。
なんで俺らヤンキーだと思ったんだろ。かけ声?それとも訛り?
夜中の1時の幽霊屋敷で飲み会?
・・・・ザッキーとズンのどちらかで、ヤンキーの姿を実際に見た人いる?
カメラには写ってなかったよね。