【ネタ】スタバで見た頑なな彼氏とスキンシップの激しい彼女

スタバで見た頑なな彼氏とスキンシップの激しい彼女

時々カフェやレストランで、周りが見えずにバトルをしたりスキンシップをしだすカップルがいたりするけれど、先日、スタバの真正面の席に座ったカップルもちょっと変なバトルをしていた。今日はその話です。

1.

この間スタバで作業していたら、向かいにカップルがやってきた。向かって右側に光浦靖子似のメガネの女の子が、そして左側にはキャイ~ンの天野似のメガネ男子が座った。二人は学生らしく、分厚い教科書を開いて勉強を始めた。

僕もしばらくコーヒーをすすりながらパソコンに向かって作業していると、彼氏がいつの間にか教科書を閉じてiPhoneを覗いていることに気がついた。熱心に勉強する女の子の横で、iPhoneを片手に持ち、じっと画面を見て、微動だにしない。「覗いている」というよりも、「凝視している」と言ったほうがいいかもしれない。

僕は再びパソコンに視線を戻してタカタカ打っていた。すると、右の光浦靖子似の女の子があくびをして、伸びをしながら、天野似の彼氏の肩をゆすった。天野はiPhoneを持ったまま黙っていた。

彼女はその後何度か揺すった。すると、彼氏はiPhoneから目を離さないまま「何?」と言った。

すると、女の子は「は~疲れちゃった〜」と言いながら、天野の肩に頭を乗せた。でも、天野はiPhoneを凝視したまま、「疲れたなら休めばいいよ〜」と答えた。

女の子は天野に更にもたれかかり、「ここわかんないの〜、教えて〜」という。

すると天野は、まだiPhoneから目を離すことなく、それも、「まったく」、目を離すことなく、「お前はよくやったよ〜、休めばいいよ〜」という。

それで、女の子は次第にイライラしてきたようだった。どんなにスキンシップでアプローチを仕掛けても、彼氏の注意をiPhoneから奪うことが出来ないのだ。

彼女のアプローチは更にエスカレートしていった。今度は、中腰になって天野に更に体重をかけつつ、天野の髪を撫でながら、「お願〜い、教えて〜」と猫なで声を出した。ここはスタバだ。そして正面に座る俺にも丸聞こえだ。そしてこの時、天野は体重を掛けられすぎて、向かって左に20度近く傾いている。

それでも、天野はそれでもiPhoneから一瞬も目を離さずに、「お前がわからないもの、俺がわかるわけないじゃない」と言った。

 

2.

それで、見ていてだんだんおもしろくなってしまった。スタバで何やってんの。しかも、なんでそんなにiPhoneに夢中になってんだよ!彼の手からおもいっきりひったくって、何を見ているのか覗いてやりたかった。

ずーっとスキンシップを取ったにもかかわらず、無視され続けた女の子は、とうとう拗ねてしまったようだった。椅子の上で体育座りをしだすと、頭を膝の上に置き、ほっぺたを膨らまし、不満な眼差しを彼氏に向けていた。どこの中学生日記だってぐらいのベタなブーの垂れ方だ。でも彼氏は全くそれに気が付かない。そして、そのまま動きが無くなってしまった。

僕はしばらくその様子をこっそり見ていたんだけど、さっきまでのワクワク感が次第に萎み、なんか興ざめてしまった。彼女の不満の表現の仕方が、どこか演技臭く感じられたからだ。それで、いい加減作業しようと思い、再びパソコンに向かった。

でも、作業をしようとしても、なかなか集中出来なかった。

目の端っこが、二人の間で静かなバトルが起きていることを捉えていたからだ。ガンとしてiPhoneを離さない天野。iPhoneを奪い取ること無く、あくまで可愛らしい彼女として彼氏の注目を惹きつけたい光浦。それが空気を震わす緊張感となって、こちらに伝わって来た。

こんなんじゃ作業できん。もう家に帰るか、と思い、僕はパソコンをたたみ、荷物をまとめ出した。

 

その時だった。

 

彼女がいきなり立ち上がり、隣の彼氏の髪を両手で激しくかき回した。

僕は驚いて二人を見た。

彼氏は驚いて、彼女を見た。

彼女は彼氏を見下ろして、睨みつけていた。

 

それで、僕はついに彼氏が彼女を無視していたことに気が付き、謝罪する瞬間が来るのか、と思った。

 

ところが、彼氏の視線が、ゆっくりと動き始めた。

彼女の顔を逸れ、次第に正面を向き、そして…手に持っていたiPhoneの画面に収まった。

そして、「プッ」と吹き出した。

 

なっ….!

お前どんだけiPhone好きなんだよ!!

 

彼女は完全にブチ切れ、荷物をまとめ、帰っていった。彼氏はそれを見て驚いて、慌てて後を追っていった。

 

僕も何故か興奮して、椅子から立ち上がったけれど、なぜ帰らなきゃいけないのかわからなくなったし、なんで興奮しているのかも分からなかった。