【ネタ】3人のヤンキーと釣り的なことをした話

1.

この間、友人と話していて「釣りに初心者を誘うのって勇気いるよね〜」って話題が出た。特に海釣りの場合の話だ。

海釣りって、他の川や釣り堀とかと比べて、釣れるまでひたすら待つ時間が長い。ヘタしたら、一日中釣り糸を垂らして一匹も釣れないこともある。釣りが好きな人は、普通魚をひたすら待つことに慣れているはずなんだけれど、慣れていない人だと、ものすごい退屈地獄を味わうことになる。誘う側からしてみれば、そうなるのは結構気まずい。

だから、初めて釣りする人を誘うときは、暇さに耐えうる人かどうか判断した上で、「ものすごく暇だよ」と念を押して行くのが一番いいという結論になった。

それで思い出した。その対局にある連中と釣りに行って、ひどい目にあったことがあったということを。

 

2.

中学の時、僕は3人のヤンキーと釣りに行ったことがあった。

うちの学校は、特に先輩の代では那覇市でも荒れていることで有名な学校で、ピークを過ぎた僕の学年にもヤンキーが多かった。で、そのうちの3名のヤンキーが、僕が釣り好きなのを知り、一緒に釣りに連れてってとお願いしてきた。

その中には、隣の学校にも名前が知れ渡るような恐ろしいヤツも含まれていたので、断るのが怖くて、僕は行くことにした。それが悪夢の始まりだった。

 

話を聞いたら、彼らは一本も釣竿を持っていないとの事だった。それで仕方なく僕は親の竿も合わせ3本持っていった。人数に対して一本足りなかったが、いざとなれば僕のを貸せばいいやと思っていた。自転車で安謝港まで行き、4人で三本の釣竿を垂らした。

ところがこの日は潮の動きが少ない小潮で、まったくといっていいほど魚の気配が感じられない。だから、竿を振れども振れども魚はかからず、たまらなく暇だった。

で、釣り好きの僕は暇に慣れていたが、ヤンキーは違った。普段から活発に動き回っていた彼らは、じっと待つことがこの上なく苦手らしく、はじめはじゃれ合ってしのいでいたけれど、次第にイライラし始めた。あー暇だと言いながら寝っ転がったり、停泊している漁船に飛び移ったり、いつ釣れるんだろーねーと僕に寄りかかったりしてきたが、見ていて三人とも明らかにイライラのボルテージが上がってきているのが分かった。

そしてついに、そのうち一人が、何を思ったのか、突然海に向かって石を投げ始めた。

そんなことをしたら死んでも魚は釣れない。でも彼らは「釣れねーぇぇぇ!!」とか叫びながら、でっかいコンクリートブロックを海にたたき落とした。水面に派手な水しぶきが上がり、それが彼らのテンションを一気に引き上げた。もやは釣りどころではない。

突然一人のヤンキーが騒ぎ出した。買ってきたばかりのタバコが入ったビニール袋が、風に吹かれて海に落ちてしまったのだ。

すると、一番こわいヤンキーが、「騒ぐな!魚が逃げるだろ」と、お前が言うなと言いたくなるセリフを吐いたあと、彼の持っていた竿の先を水面に叩きつけ、それにビニール袋を引っ掛けて掬おうとした。が、うまく引っかからず、堤防から身を投げ出しながら、何度も竿を水面にたたきつけた。

そんなことをしたら繊細な竿の先っちょがすぐに折れてしまう。ていうか、それ、親父の大切な竿じゃん!!

しかし次の瞬間、もう竿は折れていた。目の前で竿の先っちょが折れ、糸を伝って海に消えていった。愕然としていると、背後でもう一人のヤンキーが、まるで何かの薬が切れたかのように暴れだした。

あとは釣りどころではない。ていうかあまり覚えていない。覚えているのは、気がつけば竿が三本とも折れてしまったということだ。もちろん魚は釣れなかった。

さすがにヤンキーも、三本の折れた竿を眺めてボー然とする僕を哀れに思ったらしい。びしょぬれになったヤンキーが、「ごめんな」といい、結局海に飛び込んで拾ってきた、シケたタバコを一本、寄越してくれた。もちろん濡れて吸えるシロモノじゃないし、そもそも僕は吸わない。でも、何かを俺に与えることが慰めになると思ったらしい。

そして派手に絶縁テープが巻きつけられた”改造”自転車に跨り、「楽しかったぜ!また誘ってな~」と言い残し走り去っていった。

 

俺はぜんっぜん、誘って無いけどな。