やっぱり結局は金っす

1.

先週の土曜日、うちにフレンドリーなケーブルテレビ会社の人と、無口な光ケーブルの工事のおじさんがきた。

うちのアパートでは今まで光ケーブルを引いていなかったため、それを使ったインターネットやケーブルテレビやらができなかった。それで、この度大家さんがアパートにケーブルを引き、一気に全部屋のコネクターの取り替え工事を行うことにしたのだ。今回彼らが来たのは、光ケーブルを使えるよう、取り付け口の工事をするためだった。

ところが、それだけじゃ終わらなかった。

フレンドリーなケーブルテレビ会社の方が、今から光ケーブルについて説明するといい、僕を椅子に座らせて、自身は畳に座り、スポーツや映画を見たりしますか?と聞いてきた。僕はサッカーも映画も見るのが大好きなので、もちろん見ますよ、と答えた。すると、フレンドリーはスカパーやWOWOWの営業をしだした。

「月々4000円程度、一日で130円程度で、映画もサッカーも見放題です。」

しまった、、と思ったがもう遅すぎた。ふたりとも作業服っぽい服を着ていたので油断していた。訪問販売の人を家の中に入れることほどたちの悪いことはない。へえ、そうですか、と言いながら対応する。

「でも、ここは家なんですけど職場でもあるんですよ。イラストを描いてます。だからちょっと気がそれるものは導入したくないです」

「いやいや、それならむしろ映画を見ることはお仕事の参考にもなると思いますよ!」

「工事も面倒でしょう」

「とんでもない。wowowは普通ならパラボナアンテナを付けなきゃいけないけど、その工事は3万円もします。でもいまなら、ケーブルがアパート持ちで入ったため、実質タダですぐに導入できますよ!しかも、今ならチューナーも半年間タダでレンタルできます!」

きた。。

またレンタル商法だ。モデムの件で嫌気がさしていた、あのサービスだ。最初は良さ気に振る舞って、後からお金をふんだくろうとする、あの腹黒い商法だ。

「いやいや、でも月に4000円も出してられないですよ」

「えっ、お金高いですか?一日換算で130円ですよ?」

この聞き方が、そんなお金も払えないの?と言っているように聞こえ、ちょっとムッとした。「一日130円も払えないような、首の回らない生活をしてんのかコイツ」と思ってんじゃないだろうか。そう思われるのは癪だった。だから思わず見栄を張って、

「いや、それぐらいなら余裕で払えますけど。」

「なら、半年間で契約しましょう!それならチューナーもタダですし。嫌なら半年後に解約してもお得ですよ!」

もうズブズブだ。どんどんこの営業マンのペースに飲まれていく。 。

と、その時、無口な光ケーブルのおじさんが立ち上がった。どうやら取り付け工事が終わったらしい。僕の作業机を見て、驚いたような声を出した。

 

「おお!これMacじゃないですかー!僕も持ってますよ!」

 

このタイミングで、ぜんっぜん違う方向からボールを投げられて、一瞬絶句した。何を言っているのか理解できなかった。が、でも劣勢の僕にとっては、これは千載一遇のチャンスだと気がついた。

「いやー、これホントいいですよね〜!毎日机に座るたびに惚れ惚れしてますもん」

「いやね、すごくわかりますそれ!僕も10、、15年ぐらい前からのファンなんです」

「わお!筋金入りじゃないっすか!今日は工事、お疲れ様でした!!」

僕は勢いに乗って立ち上がり、光ケーブルのおじさんを玄関までお連れした。光ケーブルのおじさんは、「それじゃ」と言い残し、一人で普通に外に出ていった。・・・あれ?営業さんは?見ると営業さんは畳でポカーンとしている。部屋には僕と営業さんだけが残された。マジかよ!

 

2.

ところが、営業マンが畳からなかなか立ち上がらない。

「なにが問題ですかね。やはり値段ですか?」

「いや、お金はぜんぜん余裕なんですけど」(←まだ見栄を張る)

僕は和室の入口に立って、早く出てくださいと無言でアピールした。営業マンはのろのろと立ち上がった。

「お金に問題が無いならば、本っ当に今回はオススメなんですよ。こんなサービスがあったら、私なら絶対入ってます。実際このアパートにも、入っている人がいっぱいいますし。」

「そうなんですか」

「じゃあ、どこが引っかかっているんですかね?」

正直、僕はその場で論理的な反論をペラペラ喋れるほど頭の回転は早くない。それで言葉につまり、目が泳いだ。そして

「近くにツタヤがあって、そこでは旧作が100円で借りれます、そこでよくDVDを借りるんですが….」

となにも考えずに口に出して、あ、これだっ!と思った。キタッ!

「週に5本一気に借りたとしても、結局見る時間がなくて、2本ほど返却しちゃうことが多いんです。毎日映画を見るなんて無理なんです。だから130円は高いと思うんです」

すると、営業マンはグッと言葉が詰まった。今度は、営業マンの方がなんて言おうか目がさまよい出した。そして、

 

「いや、その場合でもケーブルテレビならば、その2枚をわざわざ返しに行かなくても大丈夫、、いや、やっぱなんでもないです」

 

そして玄関に行き、靴を履き出してドアを開け、「また今度ぜひ!」と笑顔で言った。ところがドアを閉める直前、「やっぱ金かよ」と小さく吐き捨てた。

 

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そうなんです。やっぱ金っす。