それは、切符だ

また、少しずつ書いていこう。
軽く近況を書くと、あの心臓の診断はどうも誤診ではなかったようです(前回の日記『すなけむりなのです』参照)。時々心房細動がおきるそうなのですが、別に普段の生活に影響はなく、普段通りに生活をし、スポーツをしてもいいそうです。
今日、老人ホームにバイトに向かう時の出来事です。


俺は電車の時間に遅刻しそうになって超焦ってた。片手にパソコンのはいった手さげ鞄、肩にバイトの制服を入れた袋をかつぎ、さらにもう一つ肩掛け鞄を左肩にぶら下げて、切符売り場に突進した。
時計をチェック。電車の時間まであと三分ある。あと俺がやるべき行動は、切符を自動改札に通すだけだ。しかし、それを実行に移すのを一瞬ためらった。なぜなら、若干小腹がすいていたからだ。三分あれば、西千葉駅内のニューデリーで軽いスナックが買える。スムーズに買えればの話だが・・・。
俺は冒険に出ることにした。大急ぎにニューデリーに入り、目当てのスナックをゲット。ついでにレモンティーも取ってレジに並んだ。
レジの俺の前にいたのは、俺の体の幅の二倍ぐらいはありそうな、たっぷり脂肪がついた恰幅のいい女の人だった。レジにどっかりたくさんのお菓子を並べている。驚いたのは、お菓子の中にコッペパンが二つも入っていたこと。こいつこんなに食うのか!
ところが、買いたい品物を全部レジに置いたところで、彼女はにわかに慌てだした。どうも、ポケットに財布が入ってないらしい。大慌てで、足元に置いていた鞄の中を探し始めた。
これが非常に大変そうだった。おなかの脂肪が邪魔して、うまく体が曲げられないのだ。しかも、その鞄は大きめの手提げ鞄で、中にものがいっぱい入っており、なかなか目的のものが探し出せない。
俺も焦りだして、携帯の時計を見た。
うおおおおおお!!あと一分しかねーぞ!!!!
俺は大いに焦った。自業自得とはいえ、イライラしてきた。頼むから、早くしてくれよ!!
「あ、あった、よかったーー!!」
急に女がはしゃぎだした。どうやら財布が見つかったらしい。そして、彼女も実は相当時間的に焦っていたらしく、ものすごいスピードで金を払い、鞄を持ってどかどかと走っていった。
俺は大慌てでレジに詰め寄り、財布を出しながらレジにスナックとレモンティーを置いた。
ところが、よく見るとレジにはお菓子がてんこ盛り。あの女、買ったもの忘れていきやがった!!
レジのおばちゃん「お客サーン!おかし忘れてるよー」
「えええ!?うっそー!きゃーーー!!はずかしー」
大慌てで戻ってくる女性。いちいちリアクションが大きい。
おいおい!!急げよ何やってるんだよ!!!
俺は大いにイライラした。
ところが、レジのおばちゃんをみると、彼女は俺とは逆に笑っていた。
で、俺ははたと立ち止まったわけですよ。「そうだよね、普通ここは楽しむ場面だよね」って。
俺は最近なんか切羽詰まっている感じがして、かりかりしている時間が多い気がする。今だって、相当イライラして胃も痛くなるような有様だった。
でも、以前もこんなだっただろうか?いや、ちがう。こういう状況になっていた時、俺は楽しんでいたはずだ。楽しんでいたからこそ、このブログも書いていけたわけなのだ。
そうだよ。もっといろいろ楽しんでたはずじゃん俺!どうしたんだよ、そうカリカリすんなよ、おまえらしくねーぞ。
しかもこの女性の動きっぷり、俺とすごくにてる気がする。脂肪をスリム化し、男性に変えたら俺じゃん!そうおもうと、なんか親近感まで感じるようになってきた。
ああ・・レジのおばちゃんを見たことで、少し張りつめていたものが溶けていくようだ・・・。
そんなことを考えている間、おばちゃんは俺のスナックを手に取り、会計しだした。
「200円です」
物思いにふけってた俺は切符をレジに出した。
・・・・・・・・・・・・あり?
おばさんと俺の間に一瞬流れる、微妙な沈黙。
早速これを書こうと思った。