さまよう・・・(ちょっと異常な週末その1)

最近は本当についてない上に、自分的に大スランプ。伏線は、二週間前からあった。


俺はストレスが溜まりまくって、毎日自己嫌悪と劣等感にさいやまれた。自己嫌悪の主な原因は、俺のケアレスミス。いい加減もうすぐ24なんだから、そこらへん直しなよ、と、自分であきれてしまい、それがつもりに積もって遂に自己嫌悪の原因と化したのだ。
今週の水曜日には、遂に自己嫌悪が爆発。みんなでやる日曜日への準備をすっぽかし、数ヶ月ぶりに一人日が沈む前に(完全帰宅という意味で)家に帰って、一人反省会を開いた。
でも自己嫌悪ってものはそんなに簡単に治るものではないわけで、木曜日も悩み苦しみ、結局ほとんど眠れず、そして金曜日も同じようにわき上がるイライラを押さえることが出来なかった。
日付が変わって土曜日の午前2時。まだ研究室に残っている友人に別れを告げ、俺は研究室から帰宅の途についた。相変わらず自転車のカギが壊れたままなので、俺は徒歩で家に向かった。でも、どうしてもわき上がる自己嫌悪を押さえたかったので、少し遠回りして帰ろうと思った。
その日は、街に微妙に霞がかかっていて、点のような灯りが、柔らかく周囲に広がり、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
相変わらずマイナス思考の独り言が止まらなかったけど、それでもこの柔らかい夜はとても心地が良かった。ところが、しばらく歩いていると、前日の自己嫌悪による睡眠不足が祟って、強烈な眠気に襲われた。
もう帰ろう・・そう思って家に向かう。
家が、遠かった。眠気が強烈で、意識が何度も飛びそうになった。もう歩いているのが辛い。家の明かりが見えてきた時、俺は心底ほっとした。時間はもう3時半。早く家に入って眠ろう。
ところが・・・・・・
俺はポケットに手を突っ込んで愕然となった。カギが・・カギがないのだ。
研究室に忘れた・・!
なんのために今まで遠回りしたんだよ・・。こんなひどいミスをなくすために一人反省会をして、こんなに苦しんでいるんじゃないのかよ・・!
5分ぐらいその場に立ち尽くした俺は、自分に激しく憤りを感じながら、再び研究室に帰ることにした。研究室ならば、友人が泊まるといっていたし、寝袋もコンタクトの洗浄液も、歯ブラシセットもおいている。
また、眠気との戦いが始まった。
延々と続く道を、俺はひたすら前に進んだ。とにかく眠い。気付いたら、意識が飛んでいた。足下はふらつき、幻想的な闇をさまよい歩いた。まさに『さまよう』がぴったりの表現だ。
まだ、道は長い。俺は歩きながら、一年前のデザイナーズ・ウィークを歩いている気がした。その時はものすごい劣等感と敗北感で打ちのめされた時期だった。説明が難しいんだけど、その期間を何度も歩いているような気がしたのだ。おれは凶暴な気分になった。
とつぜん、体が前のめりになって、倒れそうになった。いつの間にか、俺は生け垣にぶつかって、足を引っかけて倒れそうになっていたのだ。あり?いつの間に生け垣が目の前にあるんだ?
っていうか・・ここどこだ?
周りを見渡したが、明らかにさっき歩いていた道ではない。しばらく考えて、俺はいつのまにか道を曲がっていたことに気がついた。デザイナーズ・ウィークは夢だったのだ。
もはや、何が夢なのか現実よくわからなかった。
轟公園の横を歩いた時、公園のブランコが激しく動いているのを見た。髪の長い女の子が一人、ブランコをこいでいるのだ。真夜中の四時、霧のけむる公園で。これも夢?
また、学校の中に入った時、道脇にベッドが落ちている気がして、それに突っ込むと自転車置き場を取り囲む低木だった。
これは・・完全に末期・・。
俺は、急いで研究室に帰るため、走った。でも走っても夢を見る。とにかく、知り合い、課題、過去の出来事、幻覚、何でも見えてしまうのだ。さらに走る方向は右に左にずれた。酔っぱらいの全力疾走のようだ。
ひたすらふらふら走って、ようやく工学部一号棟に到着。エレベーターをふらふらしながら連打。エレベーターが開き、中に滑り込む。エレベーターは遂に研究室のある4階に到着した。
ついに・・遂に眠れる・・!!
次の瞬間、俺は、倒れそうになった。
研究室のカギがしまっていたのだ。
俺はただただ呆然となった。研究室に泊まる予定だった友人は帰っていたのだ。俺のカギは研究室の中にあるため、中に入れない。つまり、俺はコンタクトも外せないし歯も磨けず、寝る場所すらない。
また、建物の外に出た。何もかも、よくわからなくなっていた。
で、覚えているのはここまで。気がついたら、俺はサークル会館に寝ていた。いつ、サ館についたのかわからない。ただ、サ館にも寝袋があって、それが非常に助かったのだ。
それにしても、目がかゆい。コンタクトをしながら寝ると、本当に目に負担がかかる。いや・・なんか、右目がおかしすぎる・・
左目を塞いで、右目だけでものを見てみた。
右目は、白く霞んでよく見えなくなっていた。
(『ちょっと異常な週末その2』に続く)