中層の魚

1.
今日は過去の作品のリメイクを投入で。

 

2.
なんでか知らないけれど、僕は魚が空を泳いでいる様子を描くのが好きだ。海の中って上下どこにでも泳いでいける。鳥と違って、水の浮力で中層をフワフワと漂える魚は、鳥よりも自由度が高いように感じる。そういうところに憧れを感じているのかもしれない。

 

3.
今、例えば1000mもある深海のうち、500m付近を住処にしている魚って、どんな風に世界が見えているのか気になっている。

人間が生活している地上には、木や石などいろんなものが溢れかえっている。だから、自分が移動した時、それらのものからどれぐらい離れたかをみることで、自分がどれだけ移動したか視覚で感覚的に理解する事が出来る。

でも、大海原の真ん中の500mの中層に住む魚にとって、そんな目印なんてあるんだろうか。そこは、海底も見えず、水面も見えない。左右を見渡しても何も無い。そういうところに目印ってあるんだろうか。

人間の目には真っ暗でも、そこに住んでいる生き物にはかろうじて光は見えているのかもしれない。でも、視覚や重力の感覚で上下を判断する事は出来ても、左右(同じ深さの層)の位置関係はわかりにくいと思う。陸上のように位置関係を示す木のような目印が無いからだ。

見渡す限りどこまでも広がる空間。上を見ると、光が見える。そして下を見ると、吸い込まれるような深い闇。そして、前を見ても後ろを見ても、左右を見ても、何も無い。ただひたすら空間が広がっているだけだ。どれほど泳いでも、どれだけ移動したのかわからない。

走っても走っても、移動した実感が湧かないと、底に閉じ込められた気分になる。ずっと同じ部屋でベルトコンベアの上を走っているのと同じだ。一生をそういう空間で過ごす魚にとって、世界ってなんなのだろう。

 

4.

今日は風邪こそ落ち着いたものの、蓄膿症気味になってきてほほ骨や額あたりが痛くなってきている。まだ体調が万全でない事や、やるべき事が一段落着いたってこともあり、今日は家でマッタリ。窓の外の小雨が降る様子を眺めてた。中層を泳ぐ魚に、お前は孤独なのかと聞いてみたい。たまに起きる出会いを大切にしているかと聞いてみたい。今夜は雨の音を聞きながら深海の魚を思いを巡らせて寝る。