門をくぐらないネコ

昨日買い物の帰りにネコ3匹に遭遇した。先頭は白いネコ、その次は黒いネコ、最後は茶色のネコだった。
三匹は道路をわたってきて、ある民家の裏口の門の前に来たかと思うと、白と黒のネコが門の隙間から家の中に入っていった。ところが、茶色のネコが、門の前に立ち止まった。中に入らない。門の隙間から中を凝視しているだけだった。
別にこのネコは特別大きいわけではないので、門の隙間から物理的に入れないという事は無い。そういう事ではなく、気まずくて中に入れないように見えた。耳が少し垂れて、不安そうだった。そこはヤバいよ、2匹とも早く出てこいよと門の中に向かってささやいているように見えた。

 

その姿が小学校の自分と被った。近所の友人が、工事現場に遊びに入っていったり、火遊びをしだすと、眉毛をハの字にして「やばいよ、帰ろうよ」と訴えていた。その度に無視されたり、臆病者は帰れといわれたりした。それで、結局僕も入るのだった。

 

そんなことをぼんやり考えていると、家の外で待っているネコと同じ通りに、おじいさんと犬がやってきた。ネコよりもずっと大きくて短気な柴犬だった。この茶色のネコを見るや、一気に吠え、突進していった。
じいさんがロープを引っ張って必死で犬を止めた。ネコはというと、一瞬驚いたように見えたものの、くるりと犬に背を向け、また家の門をじっと見ていた。柴犬に対する華麗なスルー。こいつはかなり勇気のあるやつだ。
でも、相変わらず、不安そうな表情をしている。

柴犬よりよっぽどヤバい事が、この家にあるという事だろうか。それとも、2匹が出てくるまでその場にとどまろうと意地を張っているのかもしれない。どちらにせよ、こんな犬にかまってられないのだろう。

とその時、ネコが突然動き出して、門の中に中に入っていった。中で何かあったのだろうか。耳を澄ませても何も聞こえない。

 

小学生の僕は、他の友人に遅れておそるおそる工事現場の中に入っていった。人が住めるようになる前の、生皮を剥がされたような鉄鋼剥き出しの空間が、まるで古代の遺跡の内部のようで、冒険心をくすぐって魅力的だった。不安で二の足を踏んでいたその場所は、冒険に満ちた魅惑の空間だったのだ。最初のそのハードルが、意外と高い。しかしそこを超えると、後は楽しさだけが残った。

 

意外とネコも3匹でじゃれあっているのかもしれない。夕暮れの中、家路についた。