過去の傑作選その2 福岡地下鉄事件

今日はものすごく充実した一日を過ごせた。今日やったことすべてを十分集中してやれたことにとても満足満足。
でも、困ることに、こういう日ほどネタになるようなことはない。でも怪文書を放置プレイにはしたくないので(更新しないのは、時間がない時か疲れている時だけ)、今回も久しぶりに過去の傑作選でも載せたいなと思います。
福岡地下鉄事件
高二の時の夏休みのお話。
この頃俺と裕一郎は、身の程も知らないまま、漠然と『九州大学にでも行けたらいいな?』なんて考えていた。
そんなある日、この二人プラス山内真と安和、応援団長西田努で岡山に旅行に行こうということになったので、そのついでに福岡に行って、九州大学を見に行こうということになった。
楽しい岡山旅行。その帰りに俺ら二人は新幹線に乗って福岡に上陸。九州大学を見学した。
俺の記憶がただしければ、そのとき見た九州大学はものすごく古くて、ある建物(図書館か?)は、その名前が右から書かれていて、まじでビビった。
果たしてここに来た意味はあったのか?特に収穫があったのかなかったのか、自分でもよくわからないまま、大学を後にした。
目指すは最寄りの地下鉄の駅。そこから空港に向かって、時間をつぶしてから飛行機に乗るってのが今後の予定である。
その日は何故か片方のコンタクトレンズの調子がおかしかった。
なれない地下鉄のチケットを購入した後、俺は改札をくぐって、裕一郎に「トイレに行ってコンタクトをとってくるから待ってて」とちゃんと伝えて、トイレに向かった。
数分後、眼鏡に変えてトイレから出てきたが、
・・・・・・あれ?・・・・・裕一郎はどこ行った・・・?
トイレの入り口のところにはいなかった。そこですぐ隣の階段を降りてプラットフォームに出てみた。いない。
おかしいな。どこ行ったんだろう。
階段は二つあるので、すれ違いで上に登ったのかなとおもい、また階段を上ってみたがいない。
そこで改札口の駅員に聞いてみた。
俺「すいません、さっき紫色の服を来た、細くてぷらぷらした高校生見ませんでしたか?」
駅員「いや、見てない」
いない・・・どこにもいない・・・
あいつはどこに消えたんだ?
まさか俺をおいて電車でどこかに行ったとか?いや、そんなことあるわけがない。
俺はプラットフォームに降りて、大声で呼んでみた。
俺「ユーイチロー!!ユーイチロー!!!」
しかし返事はない・・・。プラットフォームの他の客たちが、大声で叫んでいる変な沖縄人をっちらちらっと見る。くっ・・・なんて恥ずかしいんだ。
しかし、次の瞬間、ある考えが浮かんで、怒りがふつふつと湧いてきた。
そうだ、あいつは隠れているんだ。そして困っている俺を見てはほくそ笑んでいるに違いない。この前のスッポンの件もあった・・・。
間違いない!あいつはどこかに隠れているんだ!!
俺は探すのをやめて、やつが出てくるまでじっと待つことにした。プラットフォームのイスに座り、荷物を膝に抱え、じっと待つ。
しかし、裕一郎は一向に出てこない・・・。
目の前を次々と電車がやってきては止まり、そしてまた走り出す。
・・・・・・まさか、本当に俺をおいて、どこかに行ってしまったんじゃないかな・・・
当時の俺にとって、福岡はまさに異国の地。こんなところで友人と離ればなれになったら、とんでもないことだ。
俺の高校の時はケータイ電話なんてない。ポケベルだ。ポケベルが主流の時代なのだ。ポケベルだけではお互い連絡とれない。そして、俺たち二人は、そのポケベルすら持ってない。
どうすんの!?おい・・じょ、冗談じゃないんですけど・・・
俺はこのときふと隣の駅に行ってみようという衝動に駆られた。もしかしたら、そこに裕一郎がいるかもしれない。根拠も何もない想像が、パニック状態の頭の中を支配した。
そうだ、行ってみよう!隣の駅へ!!
俺は地下鉄に乗り込んだ。
約二分後、隣の駅が見えてくる。プラットホームに降り立った俺は、変な期待にあおられながら、必至で裕一郎を探す。
俺「ユーイチロー!!ユーイチロー!!!」
裕一郎はいなかった。当然の結果なのに、俺は本当に落ち込んだ。
逆方向の電車に乗り込み、再び元の駅に帰る。
俺は、へなへなとイスに座った。俺の心はすっかり絶望の色に染まった。
裕一郎はこの駅にはいない。それは俺の中でもう確信に変わっていた。第一この駅には隠れるところなんてどこにもない。万が一隠れているにしても、いくら何でも長過ぎる。
じゃあ、あいつは一体どこに行ったんだ・・。
まさか、俺がコンタクトを入れている間に事件にあって、何者かに連れ去られたんじゃ・・
だとしたら、こんな広い地下鉄網だ。何の通信手段もなしに、あいつを見つけられるわけない。
いや、そうじゃないだろう。警察に連絡しなければならないんじゃないのか?
飛行機はどうしよう・・・空港で合流できれば問題はない。でも事件だったら、あいつをおいて帰るわけにはいかない・・・
俺は、この出来事に、精神的にも肉体的にも心底参ってしまった。すると何故か・・・・こんな時なのにも関わらず・・・・眠気に襲われてしまった。
俺は駅のプラットホームのイスで、眠ってしまったのだ。
・・・・・・・
何分寝たのかわからない。一分程度だったのか、それとも三十分程度だったのか。
その時、プラットフォームに電車が滑り込んできて、目の前のドアが開いた。
すると・・・・
・・・・・・なっ!!!
裕一郎じゃないか!!しかもどういうテンションなのか、踊るようにはしゃぎながら飛び出してきたのだ!!何だお前は!!
裕一郎「お前のせいだぞ!!あはははは!!!」
俺「どういうことだよ!!俺がなんかしたのかよ!!」
あいつははぐらかしてなかなかまともに答えなかったが、後でなんとか聞き出した裕一郎失踪事件の真相は、とんでもなく情けないものであった。
俺がコンタクトを外しにいったとき。裕一郎は暇だったので、一人階段を下りてプラットフォームに降り立った。
すると、やつは今後の行き先が気になったらしい。俺たちは電車経験がほとんどなかったので、何線に乗るのか、それを調べる手段も知らなかった。もちろん乗り換え検索なんて出来るはずない。
そのとき、電車がやってきた・・・・。
もう想像つくよね。彼は電車の扉の上の駅の図を見ようと電車に入り、そのままドアがシャットダウン。絶叫とともに電車は走り出す。その後、元の駅に戻ることも出来ず、駅から駅へと彷徨っていたらしい。
裕一郎「良かったな、俺に会えて!もし会えなかったら、俺一人で飛行機に乗ってるところだったぜ!」
なんだよそれ!!それは俺の台詞だろう!!
もうこいつとは絶対旅行しないと16歳の夏に心に固く誓ったのでした。
しかし、その決意は20歳の夏に、ヒッチハイク旅行で見事に破られる。
(福岡地下鉄事件終わり)