稀人にまつわる話

今日久々に駄作に遭遇。『稀人』
・・・・・金と時間返せ?!!
しかし、俺にそんなこと言える資格なんてない。そう、俺ははじめからこれが面白くないって知っていたのだ。俺はこの原作『稀人』をちゃんと読んでいたのだから・・・。
だいたい、小説が面白くて映画化して失敗するってのはよく聞く話だけど、この『稀人』に関しては、原作からしてホントに面白くなかった。
ただ、その原作のスタイルが一人称で(つまり主人公が『僕』とか『私』というタイプ)で、まるで日記みたいだったので、こうして日記を書いているものとして、それをどうやって脚本に落として映像化するのかすごく興味があったんだ。
そう・・・面白くないってわかってたのににもかかわらず。そして実際面白くなかった。
てかきもかった!気分が悪くなった。
てかなんであんな原作を読んだんだろう・・・?
その話をするためには去年の7/4、ムッシュの誕生日までさかのぼらなければなるまい・・・。
その日、俺とズンと西方と良多の四人は、新宿のアルタ前でムッシュのために頭の悪い撮影をしていた(何をやっていたのかはその4人に直接聞いて)。
で、それが終わった後、近くの紀伊国屋で映画監督たちが集って開かれた、『映画美学校』の番外編みたいな講演会に、俺と良多で参加した。
その豪華メンバーと言ったら!
・・・・詳しくは忘れちゃったけど、とりあえず黒沢清(CURE ドッペルゲンガー、アカルイミライなど)と高橋洋(あの”リング”の脚本家)、それと名前は忘れたけど『黄泉がえり』の脚本家もいた。
その時の講演ははっきり言ってあんまり役に立たなかったように感じたんだけど、すごい刺激を受けたのは間違いなかった。実際良多もその夏に映画美学校に行くことになるし。
で、この講演会のときにちょっとCMが流れた。『映画番長シリーズ』である。
以下映画番長とは・・・。
『映画番長・・・それは映画という戦場を生き抜いたもののみに与えられる称号なのだ!
同一のDVカメラで同一の予算、エンターテイメント作品という互角の条件の下に、日本映画界を代表する監督(番長)と気鋭の新人(刺客)が力と技を競い合う!・・・以下略』
こんな感じの面白そうな企画で、その番長も『ホラー番長』『エロス番長』『わら番長』(ようはコメディ)の三種類あるわけなんす。
で、こういう企画には興味津々の俺は・・
『あ、「わら番長」の中に沖縄出身がいますやん!!』(これは地元の大学生を中心にヒットしたらしい)
とか、
『高橋洋またぶっとんるっぽいの作ってるな?』
とかオタクっぽいことをぶつぶつ言ってたわけなんすよ。
で、その中で、ひときわ興味を引きつけられたのは、あの『呪怨』の監督、清水崇(なんと彼も映画美学校出身なのだ!)が監督した作品『稀人』であった。
確かこの頃には、俺は『呪怨』がアメリカでリメイクされるって話を聞いていたと思う。その監督が、呪怨以外のホラーを果たしてとれるのか非常に興味があった。
そして、さらにその興味に拍車をかけたのが、番長の高橋洋のコメント。
『もう我々は幽霊さえ出せば客が怖がってくれることがわかったんで、幽霊を出さないホラーを目指してみようと思う』みたいなことを言っていた。
それって、すげーむずいぜ!どうやんだろ、世界の清水監督はどうすんだろ!
そう、おれは『稀人』を、スッゲー期待してたんすよ。一年も前から。
ところが俺バカだから、気付いたときにはもう既に番長シリーズは終わっていた・・。
いやーーーー!!!!
もうあの作品群は見れないんだと、少しショックだった。
ところが、今年の一月・・・。俺は那覇空港で羽田行きの便をまっているとき、偶然腹黒い角川ホラー文庫のコーナーを覗いてみると・・・
なっ・・!『稀人』・・・!
しかも、リングの隣に並んでますやん!!
でも、なんで、あんなマイナーな企画の原作本がこんなところにあるの・・?
元々こういう小説があるのかなと思ったが、映画の脚本家と小説の原作者が同じであることから、これは清水崇というネームバリューをみてノベライズ化したんだなとおもった。
さすが腹黒角川ホラー。
おれは飛行機のなかで読んでみることにした・・。
ものすごく読みやすい小説なんだけど、いかんせん、主人公に感情移入が出来ない。主人公が人を殺して血を抜き取って、Fっという少女にその血を与えたりするんだけど、全体的に気違いのような理論と世界観が支配していて、気分が悪くなる。
『狂気の山脈』が東京の地下にあって、狂気の幾何学模様が支配した古代遺跡とか云々かんぬんいわれても、こっちはピンとも来ない。ただ、嫌悪感がある。
次第に目を中心に頭痛がしてきて、それでも最後まで読んだけど意味不明な終わり方で、なんじゃこりゃとしか言いようがなかった。
なんじゃこりゃ!
それが俺の感想だ。
そいうなんだよ・・俺は面白くないって知ってたんだよ・・・!
なのにさ?、近くのツタヤにさ?、一本だけ置いてあってさ?・・・
『世界の清水』とかかいてあったりしちゃってさ?・・・。
おれ『呪怨』大して怖くないのに、何故か面白いかもと思っちゃってさ?・・・
ひいい!!俺の時間を返して!!おれの時間を返してよ・・!
(こうやって、『稀人』の文句とそれを借りた俺への言い訳をかいて、また時間を失うのであった。)