恐竜博へバイトに行こう!ファイナル 俺はAボーイじゃない編

朝6時起床。いまだ体が微妙にだるい。しかしもう既に一日バイトを休んでいる。今日は絶対バイトにいかねば・・・。なぜなら、今日休んでしまったら忘れもしない三月の失態を取り戻せないからだっ!
?回想?
三月初め、俺はロンドンにいた。三週間も居候させてもらった友人と時間いっぱいいっぱいまで別れを惜しみ、遂に俺一人ゲートに入って手荷物検査を受けたときの事。手荷物をトレーの上に載せてX線で検査するのだが、そのトレーの上に、さっきまで友人と食べていたファーストフード店のコーラ(ストロー付き)を乗せて通した。
何てバカなんだ、ここはマクドナルドじゃないんだぞ!
当然イギリス人の検査官がHEY YOU! とか、これはお前が乗せたものなのか?とかいろいろ言って来た。ただでさえ英語がしゃべれないのに、時間もなくて焦っていて、YESとかNOとか適当に言っていると、コーラを没収されたあげく手荷物をもう一度チェックし直しになり、時間がなくなる。もし時間を逃したら、せっかく手に入れた格安往復チケットよりも2倍も高い正規料金の片道チケットを買わなければならなくなり、鼻血ブーだ!これはヤバい!!あせってあせって検査から出て来た荷物をかき集めると、急いで飛行機に飛び乗り日本に無事帰る事が出来た。
しかし、俺この時とんでもないものを空港に忘れてしまったのだ。
日本に着いた時、千葉県は記録的な大雪だった。こんな千葉は見た事無い!!こりゃあデジカメで撮るっきゃないぜ!!!俺はイギリス旅行前に新しいデジカメを購入していたのだ!これでかしゃかしゃしまくりだぜ!・・・・ってねーーーーー!!どこにもネーーーーーー!!!!!ノーーーーーーーーーーー!!!!
 
忘れもしないぜあの屈辱・・・。そして、今日こそあのつけを支払える日なのだ。今日出れば、またデジカメが買える!ここは絶対にいくしかない!体温計をはかった・・。37.3度・・・。
熱・・・なし!出発!!
かくして俺はマスクをし、薬も持ち、厚着もして、病原菌がうようよする空気のこもった地下の売り場へ、最後の聖戦に望んだのであった。
今日の俺は使い捨てコンタクトをきらしていたので眼鏡だった。マスクに眼鏡・・。しかもマスクで鼻を押さえているので鼻と頬の隙間から、吐いた息が眼鏡にかかり、しょっちゅうレンズが曇ってる。しかも熱があるからか額が微妙に汗ばみ、そのせいで前髪がわかめのようになったりする。こりゃ、どっからどう見ても危ないおじさんじゃん!仲良くなったバイトの仲間から、今日はあまり近づきたくないとか言われた。
しかしN森さんは別だ。
N森さんは普段でもよく親しげにしゃべりかけてくれる人で、一度ザッキーと三人で、上野から、総武線に乗り換える秋葉原まで一緒に帰った事がある。だけど、今日は親しげを通り越して、ホモっけすら感じられた。例えば、段ボールに張られたテープを切って、折り畳もうとしているときの事。N森さんがやって来て、「何してるの?」って聞いて来た。俺はもう見たまんまの事しかやってないから、「いや・・段ボールをたたんでるんです」っていったら、N森さんは、「楽しそうだね」って言った後、恥ずかしそう目を伏せた。
俺は少しぞっとした。
それで俺とA川さんって女の子としゃべっているときの事。N森さんが少し遠くから、とんでもないことを言って来た。
「山里君、今日もアキバよってく?」
・・・・・はあ!?
「あー、きいたきいた!山里君とN森さんってAボーイなんだよね」
・・・・・ええ!?
聞くと、俺の知らない合間にN森さんが勝手に俺は秋葉系で、俺とN森さんはAボーイズの仲なんだと言ってたらしい。N森さん自身は”萌”とか言う漫画を読んでいて、みんなにそういう系統だってことが広まっている。その人が言うんだ。当然A川さんも信じてしまう。俺は否定したが、この格好(マスクと眼鏡)じゃ説得力が無い。
すると今度はべつのカウンターからかなり年上(でも20代)の女の人から呼び出しを食らった。
「ねえ、山崎君だっけ?あんたアキバ系だって事隠すために日焼けサロン言ってるってこと本当?」
俺はギャンッって感じでN森さんを見た。N森さんはまた恥ずかしそうに目を伏せる。
「違うって、俺全然そんなんじゃないって!」
さらに俺の後ろ側でレジをしている女の子二人も俺を見てひそひそ話をしている事に気がついた。
え・・え・・・N森め・・・・!!!
いくら何でもちょっとやり過ぎっすよ。
するとA川さんが言った。
「あたし、別にAでもなんでもどっちでもいいんだけど」
あ、そうなの
・・・・そうだね。結構こういうのって、どうでもいい事だったりするんだよね。ようは普段の見た目や中身だもんね。
というわけで、小さい肩書きにとらわれて右往左往する器の小ささを、見事にいなされた、そんなバイト最終回だったっとさ。ちゃんちゃん
何じゃこのオチ(N森さんはとってもいい人なんだよ!)