ニワトリと風呂桶 その1

今日は本当は『恐竜博?その3』を一度書いたんだけど、ネットに載せるにはあまりふさわしくないなと思って自粛しました。代わりに、浪人なりたてホヤホヤのときに書いた暇つぶしストーリーを紹介します!
         
ニワトリと風呂桶
当時高二だった俺は、サトウキビ畑の間の白い道を歩いていた時、胸の高さほどもある大きな茶色い鶏を見つけた。
バカにデカイニワトリだ
みんなの見せ物になると思った俺は、そいつをすぐに捕まえて、近くにあった縄を、ちょうど犬の首輪のようにくくりつけた。ニワトリは全く抵抗を示さなかった。ただ一つ気になったのは、こいつが無機質で抜け殻のような目をしている事だった。何じゃこいつ、ほんとに生きてんのかな・・。
しばらくそいつを連れて歩いていると、畑の隣に軽トラックを止めて中で居眠りしようとしている親父に出会った。
「おい、何だ、そのデカ物は」
「すげーだろおやじ、あっちの道で拾った」
「こりゃすげーや、晩飯二日分にはなるぜ」
親父はトラックから降りると、俺のニワトリに近づいた。
すると、親父は何かに気がついたのか、少し距離を置いてそのニワトリの目をまじまじと見だした。
「・・・こいつ、ニワトリじゃないぜ」
親父らしくもなく顔を曇らせていった。
「はあ?」
「こいつは『ふらり火』っていう化けもんなんだよ、いますぐ捨ててこい」
「なにいってんだよ」
「早く捨ててこいって言ってんだよ」
親父が怒鳴ったら怖い。
「わ、わかったよう」
でもまさか俺が本当に捨てるわけがない。こんな特大ニワトリ捨てるのなんてもったいない。俺は既にこいつを隠すシークレットスポットを考えていた。家の裏手にある物置小屋。ガキの頃に作った秘密基地の跡。仲間に大工の息子がいて、そいつがうまくやったからいまでも残っている。そこに首につけたロープを柱にくくり付け、ニワトリを小屋の中に隠した。唯一怖いのはハブだけどこれだけデカイニワトリだ。殺して食ってしまうだろう。
しかし・・
何て無機質な目をしているんだろう・・・。生命の光というものをまるで感じさせない。目を見てると冷たく沈んだ感じになる。
親父はおびえてたのかな。ついに一回もこのニワトリに触らなかった。
なんか引っかかるなぁ
ま、いっか!
その日の深夜、俺はニワトリの鳴き声で目が覚めた。
                        続く