20Q  その2

次はキム兄さんの番だった。これはなかなか面白い問題であった。


答えのキーになる質問は、『それは電気が通っているものですか?』『外にあるものですか?』『コンクリートでできていますか?』、そしてリッキーの『遊んで楽しいものですか?』という質問だった。
キム兄「(『遊んで楽しいですか』という質問に対して)・・・ときどき」
サカセ「!!わかった!!土管じゃね!?」
俺「?どかん?それ遊んで楽しいか?」
サカセ「ほら、ドラえもんで、空き地に『土管』があって、みんなそれで遊んでただろ!」
リッキー「あ!!でもどんな時でも楽しいものというわけじゃないから『ときどき』なんだ!」
俺「そうかそうか!!しかもその他の条件も全部当てはまる!凄い凄い!」
果たして答えは『土管』だったのだ。ラスト3つしか質問が残っていないって時の大逆転。これにはさすがに興奮した。
さて、ここからが今回の本題のサカセの番である。
彼は「いい問題を考えた!」と張り切っていた。
俺「それは『動物』?『植物』?『鉱物』?『その他』?」
サカセ「『その他』。」
キム兄「じゃあ、最初は大きさから聞こうか。『それは人間より小さいものですか?』」
サカセ「『はい』」
俺「『それは両手で持てるものですか?』」
サカセ「『はい』」
それからもいくつか質問が出された。以下はその返答の一部である。
『それは家の中で使うものですか?』・・・・・『はい』
『それは電気が通っているものですか?』・・・『いいえ』
『それは手で使うものですか?』・・・・・・・『いいえ』
最初の10個に行かないまでに、既に上の質問が出てしまった。これでは相当条件が絞り込まれる!
まず、家の中でつかうもの。これで、身につけるものはほぼ消えた。
次に、『電気が通っていますか』という質問で、冷蔵庫といった電化製品は全部消える。さらに、時計、タイマー、などの小物類も消える。
極めつけは、『手で使うものですか?』・・『いいえ』。
なんだって!手で使わない!?
ということは、鉛筆とか言った文房具類は全部消え、ほうきなどの掃除用具も全部消え、本や雑誌類、皿などの食器類、調理器具さえも全部消える!
って事は足か?足で使うのか?スリッパとか、そういう類いなのか?
いづれにしろ、選択肢がかなり狭まったのは明白であった。こっちとしては、他に家にあるのってなんだっけ?という勢いであった。
しかし、そこからが、サカセの作り出した迷宮の始まりであった。
リッキー「『それは、楽しいものですか?』」
さかせ「・・・・『はい』」
・・・・・楽しいもの・・・?
俺とキム兄とリッキーはきょとんとしてしまった。
楽しい?じゃあ、玩具かなにかなのか?
キム兄「素材について知りたくなってきた。『それは、金属が使われていますか?』」
サカセ「・・『ときどき』」
『金属』で『時々』って事は、
『それ』は何種類かあって、その中には金属が使われているものがある。
ってことだと考えられる。これがさらに俺達の頭を悩ました。
俺の中では、もう手以外なら足しかないという考えになっていた。
だって、家の中で楽しめるのであまり手を使わないって言ったらテレビかなと思ったけど、テレビは手を使って電源を入れるし、第一電気を使ってる。そういえば目で見て楽しむものってだいたい電気が通っている気がする・・・。
手を使わずに遊べるもの?フラフープ?あれは家の中でやるものか?金属のフラフープってのも聞いたことが無い。サッカーボールも同じ理由でダメ。ダンスダンスレボリューションは電気。
っていうか、サカセはいったい何で遊んでるだよ!!!
俺の中の頭にはサカセが家の中で、足で『?』マークを蹴って遊んでるイメージがわき上がってきた。
みるまみるまに質問の残り個数が減ってきて、もう17個目になった。残り4回しか聞けない。でも俺達三人の頭の中はいまだ謎という霧の中。近くまで来ているのはわかるのに、答えがまるで見えてこない。落としたコンタクトレンズをメガネなしで探している気分だった。
リッキー「『それは、時間に関係するものですか?』」
サカセ「・・・広い意味で『はい』」
俺「なんじゃそりゃ!」
サカセ「ていうか、わかんないかな?!かなり近くまで来てると思うんだけどな?。ここまで来たら当ててよって」
キム兄「・・・・なんかヒント教えて」
サカセ「さっきのリッキーの質問は結構いい線行ってたよ。もしこれが、『季節に関係ある?』って聞いてたら、完全に『はい』だった」
・・・・・・・・きせつ・・・・・!??
足下で遊ぶ道具に季節に関係あるのなんてあるのか!?しかも金属も使うんだって!?
リッキー「風鈴かな・・・」
キム兄「風鈴じゃないでしょ・・・オモチャじゃないし。・・うーん」
サカセ「・・・・・・・」
俺「・・・・・だめだ?わかんね?!!ギブギブ!ギブアップ!!!」
リッキー「俺も」
キム兄「俺も。答えなんなの?」
サカセ「・・・・・・・風鈴」
・・・・・・・・・・・・・・・・はああああ!?
なに!?風鈴!?風鈴だって!!?
サカセ「っていうか、キム兄なんで風鈴否定するんだよ!せっかく答え出てたのに」
キム兄「ていうか風鈴って別に楽しくないだろ!」
リッキー「あれのどこが楽しいんだよ!」
サカセ「だって、風鈴て風情を楽しむもんだろ!楽しいだろ!」
なんじゃそりゃ!!それは愛でるとかそういうことを言うんだろ!風鈴聞いてて『うわ?!楽しいな?』なんて言うわけないだろ!
必死で考えていたみんなの不満が爆発した!
俺「おまえ何人だよ!!」
リッキー「過去の世界にかえれ!」
キム兄「平安時代に帰れ!!」
サカセ「ちょ・・ちょっと・・・せっかく人がいい問題出したのに・・」
サカセはせっかくいい問題を出したと思ったのに、みんなからこんなに避難されるなんて・・・
みんなから非難ごうごうのままその日はお開きになった。夜中の三時のことだった。
ひどい夜風の寒さにさらされながら、家に帰宅。家の中は、メタルラックを持ってきてはいるものの、依然として廃墟。
シャワーを浴びて、寒さで冷えきったからだを温めた後、倉庫のようなリビングに戻った。すると、ケータイ電話にメール受信あり。サカセからだった。
読んでみた。
・・・・なっ!!
『申し訳ありません。風鈴では遊びません m(_ _)m 』
そんなに気にしてたのかよっ!!
ちょっと可愛そうになった。
なんて、繊細な心。これだから、サカセは大好きです。
(ちなみに、次の日の彼の出した問題の答は『はな◯そ』でした。TAを含め、四人から再び非難ごうごう)