啓示

空が燃えてる!?
寝ぼけた俺が今日一番最初に思ったことはそれだった。
昨日、沖縄諸島には、中心気圧925ヘクトパスカルという、化け物級の台風が接近していた。今も強い勢力を保ったまま、八重山諸島や宮古島を暴風域に巻き込んでいる。
ところが、肝心の沖縄本島はというと・・・ニアミス。
夜間に一部強風域に入っただけで、本島はほとんどそれてしまった。となると俄然沸いて来るのは、神の島にいけるかも!という希望である。
そこで俺は早い段階で起きて、船の状況を調べて、その後みんなに連絡を回す事になった。
さて、日記も書いたし、脚本も進んだし寝るとするか・・・。
にゃあ、にゃあ、にゃあ・・・
しまった、こいつのことを忘れてた。
俺はいつもどおりニャンコに餌をあげ、外に出してやろうと思ったが・・・。考えてみれば外は台風である。ニアミスとはいえ、今は強風域の中だ。樹は揺れるし木の葉は飛んでくる。しかも沖縄の台風は進度がとても遅いので、いつ強風域を抜けるのか、わかったもんじゃない。
もちろん、風速15メートルぐらいでやられるような猫じゃないことはわかってる。でも、万が一ニャンコに何かあってみろ。絶対母が号泣する。間違いなく、身も世もないという勢いで泣き叫ぶに違いない。さらに、これに俺の親父まで加わってみろ。俺はどうすればいい?
しかし・・・・
だからといって、家に入れておいたまま寝るわけにもいかない・・・。だって、やつは俺がシカトしてテレビ見てるとやたらと泣き叫ぶのだ。“引っ掻かれる”のならまだいい。“泣き叫ばれる”と非常に困る。
それは、親父が寝ているからだ。
俺の親父は一度起きるとなかなか寝付けなくなってしまう。それで翌日は寝不足になって、仕事ができなくなるようだ。だから、起こされるとむちゃくちゃ不機嫌になる。
ここでニャンコに騒がれると、怒られるのは俺だ。
仕方なく俺はニャンコが寝付くまで、俺はパソコンをいじってる事にした。すると、ニャンコは台風なのにもかかわらず、ベランダに出たいとせがんできた。
俺「お前にはこの暴風雨が見えないのかバカチンが!!」
といってやりたかったが、猫に騒がれたら怒られるのは俺なので、ここはおとなしくベランダに出してやることにした。しばらく雨に打たれたら、観念して帰ってくるだろう・・。それが俺の目論見だった。
俺が網戸を開いてやると、ニャンコは恐る恐るベランダに出て行く。
俺はそれでパソコンをいじりだした。脚本はまた行き詰ってしまったので、いろんなブログとかを見ていた。
しかし・・・いつまでたってもニャンコは帰ってこない。
おかしいなとベランダを見みるとニャンコの姿が無い。べランダを伝ってどこかに行ってしまったのだ。でもこれは良くあることである。いつもなら一時間ぐらいで帰ってくる。
ニャンコがいるからベランダを締め切ったまま寝るわけにもいかないので、もうしばらくニャンコを待つことにした。
それから2時間がたった。もうそろそろ5時である。まだニャンコは帰ってこない。俺は少し心配になってきた。
どうしたんだろう、下に落ちたのかな・・・。
俺はベランダに出てニャンコの名前を呼んでみた。効果はない。あいつはいつも俺をシカトする。
弟の部屋の窓からもニャンコの姿を探したけど、どこにも見当たらない。
どっと汗がでてきた。
考えてみれば、あいつはかなり動きが鈍いタイプの猫だったんだ。あいつは少しデブだ。この前あいつが椅子から落ちるのを俺は見た。
まさか本当に・・?これは親を起こすべきか・・・?
でも、俺はこの時間まで猫に親を起こさせないようにがんばって起きていたのに、その俺がこんな形で親を起こしたら、俺はただの大ばか者じゃないか。やっぱ親を起こすのはまずい。どうしよう。
そのとき、ニャンコが隣の家のベランダの手すりの下のほうで、普通に熟睡しているのを俺は見てしまった。
・ ・・・・あいつ、俺を馬鹿にしてんのくぁ!!?
それ以上待つのが馬鹿馬鹿ばかばかしくなった俺は、そのままベットに突っ込んで寝ることにした。
でも完全に寝るタイミングを逃してしまった俺は、横になっている間ずっと、起きているのか、夢を見ているのか、よくわからない状態になってしまった。
俺は空が燃え上がるイメージを見た。
まるで天井を這う火炎のように、ばーーーーっと真っ赤な炎が、広大な空を多い尽くしてしてしまったのだ。
なんて美しさ・・・・・
・・・・・・・
・・・あれ?ほんとに空が真っ赤ですやん!
ベットから飛び降りたとき、めまいで足元がふらついた。最近寝不足になると、すぐにめまいがする。
ベランダに出てみると、ものすごい勢いで雲が東から西へと押し流され、空全体が真っ赤になっていた。おそらく朝焼けの光なんだろうけど、なんでこうも異常なまでに赤なんだ!?
母「台風の時は良くこうなるよ。」
今の時間六時半・・。俺こんな時間に起きるのめったに無かったから見たこと無かったんだ。
俺は、おもわずにはいられなかった。
これは、もしかしたら神様が、島に来いと言っているのかも・・・。そうだ。こんなすごい様子はきっと何かのまえぶれなんだ!直撃コースだった台風がそれてくれたのも、この導きがあったからなんだ!俺たちに来いって言ってるんだ!俺らはコーリングを受けたんだ・・!
・ ・はい、そんなわけありません。船は全便欠航でした。しかもくそ猫のせいで、めまいが一日中とれず。


↑個人的にもう少し赤かった気がする。とりあえず、画像はサイズ以外いじくってません