6回目の教習の時、僕はまたあの教官を引き当ててしまった。
彼は僕の顔を見るといきなり怒鳴ってきた。
実際、かなり不機嫌だった。
教習中ほぼ無口で、「右」「左」という以外はブツブツ何かをつぶやいていたり
急に自分の膝を叩いたりした。
正直恐ろしかったがひたすら我慢。でも、次第に挙動不審ぶりがエスカレートしていくようだったので,
思いっきってなぜイライラしているのか聞いてみることにした。
するといきなりまた怒鳴られた。
話はこうだった。
彼には大切な車があった。ミニクーパー。
乗ることはもちろん、時間さえあれば車をピカピカに磨き、それを眺めるのが好きだった。もはや彼の命とも言えるような代物だった。
ところが前日、彼は野良猫の鳴き声で目が覚めた。サカリのついた猫の鳴き声だった。
窓を開けてみると
汚い2匹の野良猫が、大切なミニクーパーの屋根の上でいちゃついていた。
猫がいなくなったので再び眠りだした。
ところが。。
二匹の猫は早くもおっさんは怒鳴るだけでなにもしてこないと察し、彼の怒鳴り声を無視した上に、大切なミニクーパーの上で交尾まで始めてしまった。
おっさんは激怒した。
「俺は家を飛び出し猫を探した。ところが暗くてよく見えねえ。散々バットを持ってうろついたが、ついに見つけられなかった。それで家に戻ってみたら…」
「やつはまた車のところに戻っていやがった」
「いくら狙いをすまして振っても、ぴょんぴょん跳ねまくって逃げまくるんだよ!!」
「それでついに猫を見失っちまった。また猫が来るのが許せなかったから、意味あるか知らんがペットボトルに水を入れて、車の屋根やらボンネットに乗せまくったんさ。」
「ところが、もう目が覚めて眠れねえ。気がついたら朝だったんさ」
この教官まだいるんだろうか。。