この時代にアナログで絵を描く意味がちょっとわかって衝撃を受けた

自分の絵について、ちょっとだけ価値観がぐらつくことがあった。デジタルかアナログか。巨人か阪神かみたいな問題です。

 

1.

多分、今後もデジタルで絵を描くとは思う。というのは、やっぱりデジタルで描くと「モノ」に囚われなくて済むからだ。

たとえば、アナログで絵を描くためには、絵の具が必要だし、筆が必要だし、パレットも水も描く紙も必要だ。簡単な絵なら別に少ない絵の具でもいいのかもしれないが、ちゃんといい絵を描こうとすると、それなりにいい筆、それなりにいい絵の具、それなりにいい紙が必要になる。

でも、「それなりにいい」の度合いが増してくると、揃える道具の値段がどんどん上がってくる。筆も一本500円から1000円以上するものもあるし、絵の具だってかなり高い。しかもそれらは消耗品だ。さらに、絵に特殊な効果をつけようとするならば、ペインティングナイフを買ったり、メディウムを何種類も買ったり。さらに他の画材に手し始めると、パステル、色鉛筆、クレパス、マーカー、エアスプレー・・・とキリが無くなり、出費がますますかさむ。しかもそれらをきちんと管理するのも大変。そして、「モノ」を扱うのだから、描くのも時間がかかるし、失敗したらやり直しも面倒だ。

さらに描き終わった絵も、「モノ」だ。狭い部屋だったら、置き場があっという間に無くなる。それに他人に見せるのも大変だ。アナログで描いた絵を、綺麗に写真でとってデータ化するのは、それなりに高い機材と技術が必要だ。実物を見せるにしても、ギャラリーなどに置かない限り観てもらえない。大きいものを運ぶとお金もかかるし、ギャラリー代もバカにならない。

それにイラストレーターならば、アナログで描いたとしても、世に出るのは「本」や「雑誌」といった印刷物。作るのに金も手間もかかるのに、結局デジタルで再現したものと変わらない。

 

2.

それにくらべて、デジタルは「モノ」ではなく「情報」だ。「モノ」ではないから手で触ることができないが、そのかわり「モノ」に囚われることもない。パソコンといった初期投資こそ高いものの、あとはいくら作って失敗してもお金がかからないし、何回でもやり直せる。また、作った後もモノが出ない。どんなに場所をとっても、それはハードディスクの中の話。しかも最初からデータなので、ウェブに載せやすい。ブログは、いわば無料のギャラリーだ。だから多くの人に気軽に見てもらえる。

まさに夢のような21世紀の描き方。「もの」に縛られないフリーな世界。さすがにギャラリーでアナログ作品と並べると見劣りはするものの、いろんな面でアナログより有利。この21世紀にアナログを選ぶ理由なんてあるんだろうか?

……..というのが、つい最近までの僕の中でのデジタルVSアナログ対決の結果だった。ところが。。

 

3.

この間、大学の友人である藤井良多が、こんな時代だからこそ絵はアナログで描いたほうがいいと言っていて、え、なんで?と思った。それはこういうことだった。

アナログは確かに描くのに手間がかかる。コストもかかるし管理も大変。でも、アナログでいい絵を描けて、それを上手くデジタル化出来るならば、はじめからデジタルで描くよりもそっちのほうがいい。描いた絵に人気が出れば、web上にどんどん広がる。でも、真に価値があるのは原画。必ずそれを高値で買いたがる人が出てくるはず。

・・・・・

考えてみれば、そりゃそうだ。それがすごい絵だったら、ネットにのせれば一気に広がる。そして、たとえ周囲の人間は見向きをしなくとも、世界のどこかには、高価で買い取ってくれる人も現れるかもしれない。アナログで描いた絵を、今ほど宣伝しやすい時代は無いのだ。

当たり前すぎて一瞬ぽかんとなったけど、それは「『モノ』という事自体に凄い価値がある」、という事実を再認識した瞬間でもあった。「モノ」に縛られ大量のお金を投資し、練習の過程で大量のゴミを生産する。でも、それは「モノ」という凄い価値を生み出すためだったのだ。そして「情報」は情報にすぎない。だから「モノ」の価値を伝えるため使う。

僕の価値観がグラグラと揺れだす瞬間だった。原画がある絵とない絵。そこには、思っていた以上にすごい差があるんじゃないのか。

 

4.

で、僕はどうするのかというと、、、と書こうと思ったけど、混乱するだけだったので、今は書かないです。ていうか、このことを今再認識している時点で今まで考え方が浅かったなと。本来ならば「デジタルは描きやすい。でも実体のない情報にすぎない」と認識することがスタート地点とも言える。その上で、自分のイラストに対する価値観を組み立てる。

自分の描いている絵がどういう価値を持っているのかは、市場が決めることかもしれないけれど、自分の絵にどういう価値観を持っているかによって、自分の絵に対する態度が決まると思う。

こんなことを書くのはこっ恥ずかしいが、僕は自分の絵に対して誇り高くありたい。ちょっと根底がぐらついたけど、もう一度自分がデジタルで絵を描く意味を見つめ直して、価値観を構築していきたい。

 

5.

ということで、今週もどうぞよろしくお願いいたします。

皆さんもいい一週間になりますように!!