駅に向かう途中の老人の話


今朝駅に向かう途中、老人がゴミ捨て場を漁っていた。ターゲットは雑誌の束だった。古い少年ジャンプが読みたかったらしい。
ヨボヨボで、手もかなり震えていた。その手で、すずらんテープを一生懸命外そうとがんばっていた。それをみて、なんか悲しくなってきたのさ。
老人になってまで、捨てられた雑誌に手を出すなんて。しかもジャンプて。
でも、考えてみたらその前日、同じ場所を通りかかった時、ananの「美しい身体特集」って書かれた雑誌が捨てられていて、思わずなんだろうと手にとっていたのを思い出した。
その途端、完全に老人擁護派に思考回路がチェンジ。
気になるものを手に取るのは自然な行為だ。駅のゴミ箱から雑誌を拾うのとは違って、違法じゃ無い(と思う)し。花村萬月は小説の題材を探すためゴミ箱を漁ると言っていた。
それにまだ使えるものを捨てる人が多すぎるから、ゴミを拾って使えばゴミ問題にもちょっとは貢献できる。
人間としてどうなの?と言われそうだけど、多様化の時代だし、全然大丈夫っしょ。
と、その時視線を感じてふとみると、物陰からじーっと様子を見ている老婆がいた。人間に対しては向けない類の眼をしていた。それは明らかに紛れ込んだ旅行者を窓の隙間からのぞく、辺境の民の眼だった。多様化した時代なら許されるかも知れない廃棄物探索行為を完全に拒絶した眼だった。
ま、それが普通の人の反応だよねと思った。