ホキ美術館に行ってきた

この前の日曜日に、千葉市緑区にあるホキ美術館に行ってきました。ホキってナニ?と思っていたんだけれど、美術館長が保木さんという方だそうです。

この美術館の特徴は、なんといっても写実絵画専門の美術館だということです。パンフレットによると写実絵画を専門にしているのは世界でも珍しいらしく、320点ほど収集しているんだとか。

でも、なぜこの写真のある時代に写実絵画なんでしょう?物事を正確に平面に写し取りたいのであれば、シャッターをカシャっと切ればいいんじゃないの?なんてことを考えながら向かったんだけれど、いやいや、すごく浅はかだったなと恥ずかしくなりました。

ホキ美術館でみた絵

「日差し」島崎信之

 なんていうか、写真をみるよりもはるかに対象がそこにいるような感じがしました。何言っているのかわからないと思うけれど、俺もよくわからない。でも起こったことをありのままに話すと、絵の中の人が本当にそこにいるような感じがしたのです。写真をみると、あ、写真だなという感じなんだけれど、写実絵画は、それ以上にそこにいる感じがする。たとえば女性の絵だったとしたら、それが絵の中に本当にいるような感じがするんです。写真じゃあそんなことないですよね。写真は写真。どんなにうまく撮っても写真です。でも、その絵女性は、本当にそこにいるように見えるんです。触ったら暖かいんじゃないかと思えるほど。耳をすませば息遣いが聞こえるんじゃないのかと思えるほど。これは、実際に見て見ないとわからないと思います。僕はその存在感に衝撃を受けてしまいました。

近くで見ると、確かに絵の具が塗られているのがわかります。筆の跡もちゃんと残っているし、絵の具のデコボコもあります。でも、そこからちょっと離れると、あっという間に本物変わっちゃうんです。これがめちゃめちゃ面白い。
人物の輪郭は絵の具でぼかされている絵も多かったです。でもそれがかえって人物の存在感を際立たせているような気がしました。

同じものを忠実に再現する写真と絵画。でもなんでこんなに印象に差が出るんでしょうか。結局あんまりわからなかったけど、そこには人を介すか介さないかの差があるような気がしています。

人は目でものをみると、脳みそでその像を捉えるのだそうです。たとえば脳の一部を損傷すると、ものの左側が見えなくなったり、他のものはちゃんと見えるのに人の顔だけ見分けがつかなくなったりすることがあるのだそうです。人には個人差があるし、その分脳にも個人差がある。だから世の中の見え方にも個人差がある。写実絵画とは、芸術家が見た対象が脳内でどの様に見えているのかを忠実に再現した絵なのかもしれません。

人は意識しだいで世の中の見え方が変わるらしいですが、芸術家はいつも美しいものを表現しようと意識しているので、一般人と同じ日常生活を送っても、より美しい世界を見ているのかもしれません。芸術家が捉えた世界を抽象化せず、忠実に再現するから、写真で撮っても表現できないような存在感を生み出すことができるんじゃないのかなと感じました。いずれにしろ、すごく感動してしまいました。一度は絶対見に行った方がいいと思います。