茨城に弟と甥に会いに行ってきた

昨日は一日かけて、相方と茨城にいる弟夫婦の家に行ってきた。奥さんはこの日は仕事だったので、弟と甥の二人に会えた。この前は5月に行ったので、三ヶ月ぶり。1歳6ヶ月になる甥のしょうたろうは三ヶ月の間にちょっとだけ大きくなってて、こんな短期間でも成長がわかるのかと驚いてしまった。うちのベランダに植えているゴーヤーとどっちが成長早いんだろう。。

でも彼は僕が抱っこしようとした瞬間に泣きだして、父親にしがみついていた。完全に僕のことを忘れているのか。あるいは僕のことがトラウマになっている、という見方もあるけれど、いずれにしろ悲しい限り。

ところが、甥はなぜか相方にはこころを開いた。しょうたろうがエアコンのリモコンを押すと、相方が目をガバっと開き、もう一度スイッチを押すと今度は閉じる。するとしょうたろうは面白がってなんどもエアコンのスイッチを押す。そのたびにゆやまんは目をぱちぱちする。喜ぶしょうたろう。嫉妬する俺。叔父の俺を差し置いて。。

それで、しょうたろうをガバっと捕獲し、「よーしイイコ、イイコ」と抱き寄せる。するとしょうたろうは泣き叫ぶ。「大丈夫大丈夫だから」と言いながら、膝に座らせる。それでも両手両足をばたつかせて泣き叫ぶ。弟に「もういい加減にやめて。夜泣きで寝られなくなるから」とおこられる。仕方なく僕は手放す。しょうたろうはダッと走りだし、弟の足にしがみついて、涙に濡れた目で恐ろしいものを見るかのように僕を見る。

僕は好かれたくて無理やり抱きしめたんだけど、そのせいで甥に恐怖を与えてしまったようだった。若い女の子を好きになったフランケンシュタインみたいな気分だ。あるいは可愛いネコを抱きしめすぎて背骨を折ったプロレスラーのような。でも相方は上手くしょうたろうの幼い心に入っていった。幼い子どもの目線に立てるか立てないかの差がここに現れたんだろう。

それでも名誉挽回したかったので、しょうたろうの目の前で、相方とクレヨンを使ってアンパンマンやらバイキンマンの絵を描いた。ついでにソファーに置いたパソコンに映るアンパンマンを見る甥の後ろ姿も描いた(上の絵です)。でも、甥はあんまり興味が無かったようだった。

 

それ以降は、しょうたろうはゆやまんには笑顔を見せたけれど、僕を見ると真顔になった。悲しかった。でも、きっと時が僕への恐怖心を和らげてくれるはずだ。甥よ、またリモコンのスイッチを押すときは、こんどは俺が目をかっぴらいてやるぜ。

 


そんな殺生な

大学4年の時、アパートに戻ってきたら、ドアの郵便受けに新聞が突っ込まれていた。日本の2大新聞の一つのY新聞だった。でも僕は新聞を取っていなかったので、配達員が間違えて僕のところに入れたのかなと思った。隣の人に聞いてみようと思ったが、いやいや、せっかくだから貰っておこうと思いなおし、その日はそれを部屋で読んだ。

翌日、大学から戻ってくると、また郵便受けに新聞が突っ込まれていた。さすがに2日連続でもらうのはマズイだろと思って、右隣の人に聞いてみた。ところが、隣の人は、そもそも新聞を取っていないとのことだった。

 

僕の左隣は空き家だった(数ヶ月前まではサークルの後輩が住んでいた)。つまり、僕の両隣も僕と同じく新聞を取っていなかったのだ。
よほどアクロバティックなことでもしない限り、こんな変な配達ミスは起きないだろう。ということは、誰かが意図的に僕の部屋に新聞をツッコミに来ている可能性が高い。

 

新聞が勝手に届くような状態になって一週間が過ぎた。3日目も突っ込まれているのをみるとさすがにゾッとしたけれど、5日目、6日目までくると、勝手に契約したと解釈されてお金を請求されたりするんじゃないかと思い始め、不安になった。

 

それで7日目。近くの営業所に電話して文句を言おうと思った。ところが、その矢先に玄関のドアベルがなった。覗き穴から覗くと、知らないおじさんが立っていた。30代から40代ぐらいに見えた。玄関のドアを開けず、インターフォンで対応した。「どちらさまですか?」
すると、Y新聞です、といってきた。ついに来た。。新聞を受け取ったことで、お金を請求されることを覚悟した。3年前の新聞勧誘の恐怖体験がこみ上げてきた。

 

「あの、、新聞、、いかがですか??」

 

その声は、びっくりするぐらいナヨナヨしていて、弱々しかった。もっと凶暴さを抑えたような、作り笑い的な明るい声を連想していたので、想像とのギャップに驚いてしまった。

 

「さ、三ヶ月でいいんで、、」
「もしかして、いつも新聞を入れていたのはあなたですか?」
「そうです、気に入っていただけましたか?」

 

まじか、本当に、確信犯で入れていたのか。。頭の中では理解していたつもりだったけれど、実際に本人の口から勝手に配達してましたと聞くと、ものすごい違和感がこみ上げてきた。これは明らかに異常だ。
「いや、僕はいりません。そして、今後も新聞を採る気ないので、もう入れないでください」
すると、ショックを受けたのか、彼は泣きそうな声でこう言った。
「そ、そんな殺生な…..!!」

 

「殺生な」と聞いて、絶句した。言葉自体、時代劇以外で聞いたのは初めてで、本当に驚いた。でも、それ以上に、その言葉に込められた悲痛な叫びが、ものすごい鋭利な刃となって胸をえぐった。

 

ひと通り泣き言を聞いた後、僕はインターフォンを置いた。しばらくたって、玄関の覗き穴を見に行ったら、もう中年の男の姿はなかった。

 

彼の「殺生な…!」という言葉が頭に焼き付いて離れなかった。だいたい「殺生な」という言葉が出てくる時点でおかしい。ここからは勝手な想像なんだけれど、彼は末端の人間なのだと思う。おそらく厳しいノルマを課せられていて、今月中に何人分の契約をもらってこい、と言われていたのだろう。もしかしたら、そのノルマを破ると仕事がなくなってしまうのかもしれない。あるいは、上司が3年前の新聞勧誘みたいな人で、精神的に追い詰められているのかもしれない。

 

だいたい、勝手に新聞を突っ込むやり方だって聞いたことがない。たぶん、相当追い詰められて、こういうことをしたんだと思う。どうしても新聞を捌かなきゃいけなくて、どこかで何がなんでもばらまきたかったんだと思う。

 

新聞配達員が去って、働くってなんだろうと考え始めて、こっちも凹んできた。
 一歩間違えたら、世の中は一気に生きづらくなる。

 


新聞勧誘

1.

いまでこそ年齢が1つ2つ違っても大した差はないってのは当然理解しているけれど、大学入りたてはそうでもなかった気がする。それまでは年齢の差=学年の差だった。だから浪人して大学に入って、年下が同じ学年にいるって感覚がちょっとおもしろかったし、変なプライドも出てきた。そのせいで結構恥もかいた。

 

2.

僕は千葉に出てくるまで新聞勧誘なるものに出くわしたことがなかった。
大学一年のとき、近所に年齢は一つ下だけど同じ学年の友人がいた。よく彼の家で、学校やサークル、映画の話をしていた。
ある夜、おしゃべりをしてるとドアベルが鳴った。それは新聞勧誘だった。

友人がその対応に出た。彼の家は玄関のとなりに四角い引き窓がついていて、そこから対応していた。だから玄関は全く開けていなかったが、外の訪問者と話をすることができた。その新聞勧誘は中年の細身のおじさんだった。

新聞勧誘のおじさんは優しい声で「なあ、いいだろう?3ヶ月ぐらいお願いだよ」としつこくせがむ。

それに対して、友人は、「いや、その予定はないですし…..まあ…そうなんですけどね….」と結構丁寧に対応してる。この時は、こういうのを丁寧に対応するヤツだったんだな〜ってぼんやり思って待っていた。ところが、5分たっても戻ってこない。まだ延々と話をしている。

だいたい、勧誘のおじさんは家の中に入っているわけでもないし、いりませんと言って窓を閉めればいいだけなんじゃないのと、だんだんイライラしてきた。すると、不思議な事に変なプライドが頭をもたげてくる。
多分彼はまだこういう訪問販売を断るのに慣れていないんだろう。彼は優しすぎるのだ。ここは一つ、年上であるオレがオトナの断り方というものを見せてやろうじゃないか、と思った。

 

それで、友人に加勢しようと、玄関に向かい、新聞勧誘に声が聞こえるように彼に後ろから声をかけた。

「別に新聞要らないんだったら、スパっと断ったら?」

こんなかんじで言ったら、相手の勧誘する情熱も萎えるだろうと思った。

 

ところが。新聞勧誘のおじさんが、急にドスの聞いた声で文句を言ってきた。

「なんだてめぇ、営業妨害するつもりか、ええ?」

 

・・・・・・・・・・・

 

あまりの声色の変化に驚いてしまった。まるで映画の中のヤクザのような声だ。

「なめてんのか、てめえ、上等だ、出てこいよコラぁ!」

その時、窓越しにおじさんと目があってしまった。見たこともないような恐ろしい形相で僕を睨んでいた。このあまりの豹変ぶりに、僕は完全に「聞いてないよ」状態になって、石のように固まってしまった。足は震えるし、言葉も出ない。

すると、アパートの大家さんが出てきて、どうしたんですか?と新聞勧誘に声をかけた。彼はこの部屋のやつ舐めてるだろとか文句を言い出した。そのすきに友人が「奥の部屋に行っていていいよ」と行ったので、僕はすかさず和室に戻り、ふすまを閉めて、クッションを抱きしめて、ボー然としてた。新聞勧誘に、精神的ダメージを与えようとしたのに、逆にものすごいカウンターパンチを食らってしまった。テンプルに入って脳が揺れたような感じだった。

しばらくして友人が部屋に戻ってきて、新聞勧誘は気をつけないとだめだよ、と言われた。

「特に〇〇新聞はヤクザみたいだってことで有名でしょう、オトナの対応をしなくちゃね」

 

さらに強烈なアッパーカット。

いろんなところで大ダメージ。

 

ということで、今週もよろしくお願い致します。
変なプライドを持たず、毎日謙虚にすごしていきたいところです。
ここに来てくれた皆様もいい一週間になりますように。

「イラストレーター100人LINK」に掲載してもらいました

今週はオリンピックのせいで生活のリズムが狂いまくってずっと体調不良だけど、それでもいろいろ仕事ができて充実していたんじゃないかと思います。ただブログの絵がだいぶ適当になってしまったのがちょっと残念。来週からもう少し時間をつけて描きたいです。

今日は、イラストレーターのサイトのリンク集である「イラストレーター100人LINK」にうちのサイトを掲載してもらいました。早速何人か見に来てくれたようで、すごく嬉しいです!

イラストレーター100人LINK

今後ももっと仕事の裾野が増えていけばいいですね!

 

今日はもう休もうと思います。来週もいつものようにブログを描いていきたいと思います。

今後共よろしくね。

 

ということで、今週もお疲れ様でした。

日曜日の深夜に。

 


黒い水槽

1.

小学生のとき、友人の間でちょっとした熱帯魚ブームになった。僕の家には一番長い辺が40センチぐらいの水槽があって、そこにプレコという魚を入れた。これは南アメリカ原産のナマズの仲間なんだけど、口が吸盤のようになっていて、岩などにへばりつくことができる。でも飼ってみたものの大抵水槽の壁かガラス壁にへばりついてばっかで、見ていてちっとも面白くなかった。

ある日家の近くの川の浅いところをよく見ると、小さな魚がいた。網ですくってみたところ、それは小さな野生のグッピーだった(外来種)。野生のグッピーはメダカのような体つきをした個体がメス、からだが小さくて、ひれにちょっとだけカラフルな模様がついているのがオスだ。これが何匹か採れたので、寂しかった水槽で飼うことにした。

それでもまだ魚が少ないように感じられたので、今度は川で釣れた小さいテラピアも一緒に買うことにした。これは沖縄の川にはウジャウジャいるアフリカ原産の魚だ。これでだいぶ水槽が賑やかになった。5センチぐらいのテラピア、3から4匹いるグッピー、そしてプレコ。悪くない組み合わせ。

ところが、数ヶ月もすると、グッピーのメスの腹がどんどん膨らんできた。それで卵を生むんじゃないのかと期待してたんだけど、ある朝起きてみたら、一気に数ミリ程度のちっちゃい子グッピーが増えていて驚いてしまった。グッピーは卵を腹の中で孵すらしく、子供を出産するのだそうだ。

これで一気に水槽が華やかになった。小グッピーは何匹か死んだけれど、ほとんどのグッピーはそのまま成長し、更に数匹のメスグッピーの腹が大きくなってきた。

 

 

2.

ある日、友人と弟と数名で首里城のすぐそばにある龍潭池に釣りに行った。ホントは釣りしちゃいけないらしく、今は全然そういう人はいないんだけど、当時は釣りする子供が結構いた。でも釣れる魚といえばテラピアぐらいで、近所の川と代わり映えがなく、正直物足りなかった。

ところが、しばらくたって友人の竿でエビが釣れた。

4センチぐらいの大きめのエビだった。正直こんな海老が龍潭池にいるなんて予想もしてなかったので、驚いてしまった。

それで、龍潭池の浅い部分をよーく見てみると、確かにエビがいる。しかも1匹2匹ではない。試しに底を網ですくってみた。すると、大きめのエビの他にも小さい数ミリ程度のエビがたくさん採れた。みんなものすごく興奮した。

たちまちバケツには、エビでいっぱいになった、このエビをどうしようかという話になったが、物珍しさも手伝って、このままエビを持って帰って水槽で飼おう、という話になった。友人と二人で分けても大丈夫なように、少々多めに持って帰ることにした。

 

ところが、家の近所まで戻ってきて、いざエビを分けようとすると、「いやいや、俺んちもう水槽片付けちゃったよ」と言われた。「これお前が飼うんじゃないの?」

言われてみれば、友人は魚が死んだので水槽を片付けたと言っていたような気がする。しまった、完全に忘れていた。

僕は勝手に二人で分けると思い込んでいたのだ。小さいエビばかりを持って帰ってきたんだけど、30匹はいる気がする。

でも、魚釣りの餌として、エビってよく使われているから、水槽に入れても多分テラピアか何かが食べてくれるだろうと思い直した。結局、家に帰ってそれらを全部水槽にぶち込んだ。すると、水槽に大量のエビが舞い始めた。魚が食べてくれるかと思ったが、テラピアはちょっとエビに驚いて食べようとしない。グッピーはなおさらだ。みんな窮屈そうに泳ぐようになった。夜になってさすがにエビを入れすぎたかなと不安になったが、結局そのままでいくことにした。

ところが。。

 

翌日になって水槽を見てみたら、こんどはなんとグッピーが出産していた。しかも二匹も。つまり、二匹分の腹から出てきた子グッピーが一気に所狭しと水槽内を泳ぎ始めたのだ。

実際水槽は狭かった。グッピー3代目の誕生はちょっとは嬉しかったが、小さい小魚、小さいエビがうじゃうじゃ動いて、見ていて蕁麻疹ができそうなぐらい気持ち悪くなった。水面には早速死んだ小魚やエビがぷかぷか浮かびだしていた。これはマズイと思い、死骸をすくって捨てる。

これはもう無理。3分の1ぐらいまで間引こう、と決意した。水槽が寂しいと思い、増やしてきたけれど、今は「こんなはずじゃなかった」という思いが強かった。でも、気持ち悪いから明日やろうと先延ばしをした。

 

翌日。。

 

水槽を見た。水槽は、真っ黒だった。。

まるで墨汁をぶちまけたかのように、真っ黒な水が、水槽に入っていた。水面にはおびただしいほどの死骸が浮かんでいた。プレコはガラスの壁に吸盤がひっついたまま死んでいた。まるで、伝染病が流行ったようだった。なにかが臨界点を突破して一気に増殖し水槽が一気に黒くなったのだ。この黒い水の黒い粒一つ一つは、魚を死に至らしめた病原菌なのかもしれない。

そう考えるともうショックだったし、おぞましくて水槽に近づきたくなかった。黒い悪意の塊のようだった。

 

結局それ以来魚を飼っていない。