埋もれた秘密兵器

最近BB弾って言葉をあまり聞かないんだけど、今でもあるのかな?サバイバルゲームではまだよく使われているらしいけど、昔あった子供用の空気銃とか、色のついた透明な弾はあんまり見たことがない。

小学校のとき、よく近所で戦争ごっこみたいなことをしていたことがあって(といってもさすがに人には当てたりしなかったけれど)、近所の別グループの子供たちと戦争するんだっつっておもちゃの空気銃やらBB弾やらを集めまくっていたことがあった。

近所の子供といっても、一体誰のことを指しているのか、みんなよくわかっていなかった。なんとなく、近所の団地にはヤバイ奴が住んでいて、そいつを親もろとも退治する、ていうのが、僕達の目標だった気がする。そのために、工事現場から塩ビのバイプを盗んできて、そこからロケット花火を発射するバズーカ砲を作ってみたり、筒状で先端から火の玉が出る花火「21連発」などをお小遣いを貯めて仕入れてきたり、大量の水風船を用意したりしたんだけど、最強の武器はやはり空気銃だった。といっても子供用の安物で、10メートルもまっすぐ飛ぶことは無く、当たってもちょっと痛いぐらいの玩具の銃だった。

ところがある日、子どもの戦争ごっこの輪に中学生が入ってきた。小学校を卒業して以来疎遠だった2コ上の人だったんだけど、久しぶりに小学生の輪に入って遊びにきたのだ。で、戦争ごっこだと知って、家からものすごいものを持ってきた。それは、見たことも無いぐらいの完璧な空気銃だった。プラスチック製ではあるけれど、持つとずっしり重い。しかも、10メートルぐらいなら余裕でまっすぐと飛ぶ代物だった。狙えばだいぶ遠くにある空き缶に当てることもできるし、葉っぱを狙えば、貫通してまんまるの穴が開いた。

この銃は高かったらしく、中学生はあまり貸してくれなかった。けど、しばらく遊んでいるうちに徐々に普通に僕らに預けるようになった。

ある日、友人が家から、中学生の持っていたエアガンを持ってきた。前日、家で数人とゲームした後、中学生が置き忘れてしまったらしい。それで、中学生に電話したところ、いずれ取りに行くからしばらく預かっといて、とのことだった。思わぬところで最強武器を手に入れてしまった。

そこで、せっかくだから秘密基地もバージョンアップさせようと言うことになった。かねてから目を付けていた所があった。よく遊ぶ公園の隣に大きな空き地が広がっていたのだ。そこは僕らが勝手に敵地と定めていた団地から近い所にあった。そこに基地を設ければ、一気に攻め込める。空き地のどこに基地を作ろうかといろいろ探していると、コンクリートの基礎がむき出しになって、しかもコンクリートの下に潜り込める場所があった。背をかがめないと潜り込めないけれど、まさに規模の小さい洞窟のようで、秘密基地にはぴったりだった。

早速ここに武器を全部移動しようと言うことになった。武器はいつもは単純に家に置いているんだけど、それを基地においている方がずっと面白いと思った。それで、僕は家から弱々しいおもちゃの銃を持って再び出来立ての基地に戻ってきた。みんなも戻ってきていて、塩ビパイプや、さまざまな銃、そしてフリスビーやらがその洞窟に納められた。

すると、友人が中学生の銃を持って、これをどうするかと聞いてきた。ちょっと迷ったが、これも基地にしまっておこうという話になった。

そしてメンバー全員が、この基地のことは誰にも言わないと誓い合った。

ところが、翌日大雨が何日にもわたって降り出して、しかも台風までやってきた。僕は武器が心配になって、気になってしょうがなかった。それで台風明けに友人の家に行って、基地を見てこようと言った。すると、友人は、いやいや、あそこは天井もあるし、別に大丈夫だろうと全然気にしておらず、最近買ったばかりのゲームをやろうと言い出した。その友人は、近所の子供たちの中では一番喧嘩が強くてたよりになるやつだったので、彼がそう言うなら 大丈夫だろうと僕も安心してゲームした。それで、すっかり武器のことを忘れてしまった。

 

数週間経ってある日、友人と一緒に歩いていたら、中学生に会った。彼はそれまで学校でテストがあってそれの勉強で大変だった、中学は大変だぞ、みたいなことを話していたんだけど、そういえばあの銃どうなった?と聞かれた。それで、あ、そういえば、、と思い出した。

ものすごい秘密基地を見つけて隠してあるんだ、そこに武器を全部保管してある、というと、まじか案内して、と言われた。そこで行こうとしたら、友人が、あ、俺帰るわ、と言い出した。

行こうぜーと誘ったけど、今から塾があるから、という。でも彼は塾なんて通ってないし勉強も嫌いだ。それで、そんなはず無いだろと言ったら、サッカー部だったサッカー部の間違い。じゃあな、と行って無理矢理帰って行った。

それで、僕とその中学生二人で、公園の近くまで歩いて行った。

 

その空き地に一軒家が建っていた。

 

・・・・・・

 

だからあいつ逃げたのか!

 

あの空き地はもともと、家を立てるための更地だったのだ。ていうか、コンクリートの基礎がある時点で、建築はすでに始まっていると見るべきだった。でも、小学生の僕らはそんなことに気が付かず、わざわざ基礎下の、人の見えないところに隠したのだ。だから僕らの「武器」は、そのまま地面の下に埋もれているに違いなかった。

 

オレの銃はどこにある?と中学生が聞いてきた。ボー然としてた僕は我に返ったが、「この家の下だよ」とはさすがに言えなかったので、「この辺にあるはずだけど」と迷った振りをして、「俺も詳しい場所わからないから、あとで聞いておくわ」と言って家に向けて歩き出した。

中学生は「あ、そうなの?じゃあわかったら教えろよなー!!」

といって後ろで手を振っていた。

 

取り敢えずその後、大変なことになりました。

 

 

 

ということで、今週もお疲れ様でした。

オリンピックが盛り上がっていて、毎日楽しいです。

また次の日曜日に。