ヴァンパイアのルール

最近スティーブンキングの『呪われた町』と、そのオマージュである小野不由美の『屍鬼』を読んでから、自分の中で吸血鬼、特にヴァンパイアがマイブーム。

『呪われた町』は、ジェルサレムズ・ロットというアメリカの小さな街の古い屋敷に何者かが引っ越してきて、徐々に街の人たちが吸血鬼になっていくという話。小野不由美の『屍鬼』は舞台を日本の外場村に変えてはいるものの、ほぼ同じストーリーだ。しかし、舞台となる国が変わることで信仰や生活文化が全く違ってくるので、ストーリーが同じでも受ける印象が全然違ってすごく面白い。

でも、この両者の比較の話はいろんなサイトでやられているから置いといて、僕はこのキングの呪われた町の中で、ヴァンパイアの扱い方(特徴とかルールとか)の説明がほとんどされていないことに驚いてしまった。みんな、ヴァンパイアのこと知ってるよね、って扱いだ。

もちろん僕も以前から吸血鬼のことは知っている。血を吸う化け物だろ?不老不死。十字架とニンニクが苦手。日光がダメで昼間は棺桶で寝る。心臓にくいを打たれると死ぬ。そして血を吸われた者も吸血鬼になる。

でも、たとえばヴァンパイアは家に侵入しようとする時、家の中の人に招待されないと入れないっていうのは知らなかった。また吸血鬼は鏡に映らないってことも初めて知った。
これらのルールは、キングの小説を読み進めるうちに知ったことだった。でも、小説の登場人物は、20世紀の現代社会(吸血鬼なんておとぎ話さ)が舞台なのにもかかわらず、みんなこのルールを知っていた。つまり、このルールは説明されるまでもない一般常識だということだ。そうなのかーこれも文化の違いかーと感心したが、その時はそれで終わった。

で、この間『ぼくのエリ 200歳の少女』というスウェーデンの吸血鬼映画を見た(オススメ!)。こっちは小さな子供のヴァンパイアが出てくるんだけど、この作品にも鏡に映らない、中の人の誘いがないと部屋に入れないなどのルールが適応されていた。しかもその友達である人間の子供まで、このルールを最初から知っていた。

おどろいた。このルールは世界規模で常識だったのか!アメリカと北欧で細かい設定まで同じってすごい!

これらのルールは19世紀の小説『ドラキュラ』で一気に広まって、それ以後あまり変わってないらしい。でも、僕は小説は読んだことないけど、フランシス・コッポラの映画版だとヴァンヘルシング教授は普通に最初からドラキュラの性質を知っていた。ということはルールはそれ以前からあったということだ。
一体いつからこのルールが存在するんだろう?

ヴァンパイアのルールは昔から受け継がれて、生き残ってきた。そしてこの21世紀でもうまく適応して、次々に新しいものがたりを生み出して行く。
一見幼稚な設定なのに、こんなに息長く続き、しかも世界規模に成長していることに、凄い壮大なものを感じる。ただの怪談から生まれたバケモノなのに、科学が比べ物にならないほど発展した現代社会でもしぶとく生き残っているところが本当にすごい。きっと人間の恐怖の感情の根源に触れるものがあるから、こんなに続くんだろう。

恐怖って本当に奥が深いな。取り敢えずジョニーデップの「ダーク・シャドウ」は絶対見る。