ステーキ出して


2日前にも書いたけど、ふじりゅーは高校の同級生で、ニコ生では「オキナワの松潤」と言われるほどのイケメンだけど、ハイテンションで毒舌。結婚式で新郎の上司の長い挨拶に対し「巻いて巻いて」とジェスチャーをしてしまうほど、余計な一言を言いたくてしょうがないタイプだ。

そんなふじりゅーは今年で東京に出てきて1年になるが、それ以前は地元で小学校の先生をしていたらしい。
小学校の先生て。。
ハイテンションなふじりゅーが、ハイテンションな小学生とエキサイトして教室を破壊している様が目に見えるようだ。

と、その感じが僕の表情に浮かんでしまったのか、「わかってる、みんなそういう」と言われた。じゃあなぜやめたのかと聞くと、いろいろあったのだという。

 

家庭訪問。彼は訪問先の家庭でお茶やお菓子を出されるのが嫌だったらしい。
小学校なので、児童の家庭は同じ地区に密集している。そのため、出てくるお菓子がその地区で有名な饅頭やケーキなどに自然と限定されてくるのだとか。いくら美味しくても、訪問先で毎回同じお菓子が出てくるのにはうんざりしてしまう。でも、そういうことを表情に出したら、相手に対して失礼だ。
だいたい訪問先でお菓子をバリバリ食うわけにもいかないし、全く食べないのも悪い。そのへんのバランス加減は難しい。だから、お菓子が出るたびに要らない気遣いをしなければならなかった。ふじりゅーはそれが嫌だった。
そしてついに、親たちにお菓子を出さないようお願いすることを決意した。

ある日のホームルームで、彼は児童たちに呼びかけた。

「今度の家庭訪問ですが、今回はお父さんお母さんにお菓子を出さないように伝えてください。」

彼は、ここで止めておけばなにも問題はなかった。問題なんて一切ない。
でも、冒頭で書いたとおり、彼は余計な一言を言いたくなるタイプ。。コレはふじりゅーをふじりゅー足らしめるある種の定義だった。ふじりゅーの頭の中には、すでに、しょうもないフレーズが浮かんでしまっていた。もうそうなってしまっては、押し寄せる誘惑に抗らいようがない。まるで生理現象のように、彼は言葉を吐き出した。

「お菓子はいりません。でも、どーしても出したい場合は、ステーキを出してくださいワハハハ」

翌日校長室に呼び出され、「担任からステーキを出せと言われたと保護者の方からクレームが来てるんだけどどういうことか」と質問された。

と、これ以上聞くのが怖かったので聞くのをやめた。彼も僕も今年で30。人生はまだまだ続く。