仕事と学校


ありがたいことに、七月から仕事が徐々に入るようになって、八月はほぼ毎日仕事をしていた。それで、九月に入ってイラストの学校が始まると、授業に全く魅力を感じなくなってしまった。
仕事だと描いた分だけお金が入る。クライアントの方々が絵に価値を見いだし、お金を払ってくれる。ぼくはこの「絵という価値を自分の手で生み出して、買ってもらう」という感覚がすごく新鮮で、衝撃的だった。
会社をやめて、イラストの学校に入り直して以降、絵を描くことは、目的はいろいろあれど、所詮学業の一つに過ぎなかった。先生から評価やアドバイスをもらえて、それはそれでありがたいけれど、自分か描いた絵がどれぐらいの社会的価値を持つのかはわからなかった。一定の価値を持っていなかったとしても、頑張っていればそれなりに評価された。でも、アートではなくイラストである以上、なんらかの社会的価値がないと意味がない。社会的価値を無視して絵を描くのは、美的追求みたいな崇高な目的でもない限り、「頑張っている」気分に浸って自己満足にふけるのと同じだと思う。
というわけで、学校で絵を描くということに対してあまり興味を持てなくなってしまった。実際にはもっと自由に実験が出来る学びの場のはずなのに、全然そう見えなくなってしまった。
お金にならないから学校に行きたくない感覚。汚れた考え方なのかな…。
でも、もはや卒業することには興味ない。