疾走、風の中を

サークルの村山とバイクを二ケツした。
風の中で、だだっ広い駐車場の向こうにそびえ立つ、ばかでかい入道雲を、俺は見た。
こんな光景を探すために俺は生きているのかも、と思った。


新しい日

この数日間は怒濤のように忙しかった。でも大半は俺に対する祝福だった。
23歳の誕生日。その日は一日中バイト(日独親善のナンチャラッてやつ)だったので、夜になって初めて・・・ああ、俺23になったんだ・・・と感じた。
23はもう20代に入って四年目の歳。俺の中では既に20代中期に突入してしまった。いい加減このままガキみたいなまんまでいいのか?漠然とした不安が頭の中を支配した。
そこで、この一年の誓いを立てることにした。とりあえず、まっすぐに生きよう。
なんにまっすぐなのか、それはまだ良くわからない。でも、多分来年はかなり計画的に生きなきゃならない時期になるんじゃないかと思う。俺に今に技術ではとてもじゃないけどデザイナーなんてなれないし。技術を伸ばすなんて、1,2,3,年すべてで言ってきている気がするんだけど、いい加減ここらで挽回しないと大変なことになりそうだ。
でもまあ、それは勉強面の話。内面的な生き方はどうか?
俺はいろいろ人から与えられ過ぎだなと最近よく思う。
この前のバイトだって、ザッキーとヒロキさんの世話になりまくったし。
おれが与えた事なんてあっただろうか?ていうか与えていなきゃ人間関係が成立していない気がするんだけど、でもそれにしても、他人が施してくれたことに十分答えているのか心配だ。それにどこまで人に与えればいいのかわからない。
そこらへんの生き方をハッキリさせよう。決めた生き方を貫く1本の芯のようなものを確立させよう。
それが今年の目標になった。
俺は夜10時から、それをやると心に刻むために、道をまっすぐに歩いた。さくらももこがそれをやるのはいいと言っていたからだ。俺は大マジメだ。
道をまっすぐにあるいて(道なりに微妙に曲がったりはしたが)、Y字路にさしかかった。俺は迷ったが、その壁をよじ登り、さらにまっすぐに歩いた。人が見てたけど気にしなかった。
しばらく歩いて、マンションの壁に遭遇した。さすがにこれは無理じゃないかと判断。今度はまっすぐ今来た道を帰っていった。
でも、俺の中で、マンションの壁を『無理じゃないか?』と判断してあきらめて帰ったのが少し引っかかってた。
『じゃないか?』・・・つまり試してないのだ。登れるかどうか。見た目で判断してしまった。儀式の中でそんなことをしてしまうなんて、それは失態もいいところだ。これで俺はいいのだろうか?
しかし、その後の二日間は徹底的に人からものを与えられた。
翌日は、俺のしばらく人生の目標と化していたiPod shuffleを、うちのサークルの03の野郎どもからもらった。これには驚いた。マジで感謝。たくさんの食べ物やケーキももらったし、ガラス細工や馬のぬいぐるみももらった。ユンケルももらった。笠原さんに酒の洗礼も食らった。
さらに次の日は地元つながりの友人たちに、サプライズ誕生会をやられてしまった。恐ろしいほど巧妙なやり方で完全にだまされた俺は、本当に驚いた。
昼から部屋をすてきにデコレーションしてくれて、ケーキや鍋を食べた。その時の雰囲気と、寒い夜中の公園にいった時の美しい光景は、多分俺は一生忘れない。
俺は本当にいい連中に囲まれて生きてるんだと再認識した。皆最高だ!
こんなに『もの』を与えてもらったからには、俺も何かお返しをしよう。倍返しぐらい出来たらいいな!
俺も与える人間になろう。そのためなら、マンションの壁ぐらい超えてやるさ。きっと出来る。
まずは相手の話をちゃんと聞くことからか?(小学生並み)


ご報告

え?・・・・本日で私は、一つ歳を重ねまして、兄さんになってしまいました。
親父から夕方頃電話がきて、
「23年前、お前を帝王切開で取り出したのは俺だ。さっきそれを思い出した」
って言われて、嬉しいやら恥ずかしいやらきもいやら・・・。
この一年もよろしくお願いします


結婚式で死んだお話

11日、つまりこの前の月曜日、俺はまさみ、あーやーとともに、舞浜のシェルトンホテルに向かった。目的はリョウさんという、沖縄料理店『ちゃんぷる』の常連さんの結婚式の二次会に参加するためである。
リョウさんは、その年よりも圧倒的に若く見える人で、始め合った時は俺とタメか、1?2こぐらいしか違わないだろうと思ってた。
でも実際にはもっと離れているわけで、その分人間的にもかなり、っていうか、俺よりは圧倒的にしっかりしている。
で、まあ、ちゃんぷるの兄貴的な存在な訳です。手とかもごっついし。
今回俺はその二次会で、会場のBGMのボタンを押す係を担当していた。しかし、俺たち一行は既に三十分遅刻。ヤバい!
ニコラスさん「大丈夫だよ。なんか司会のところにBGMの機材がおかれてたんで、俺がやるよ」
ニコラスさんとは今回の二次会の幹事で、ちゃんぷるの常連さん。俺と干支一周分も離れているのに、めちゃくちゃ仲がいい素晴らしい人だ。その姿がアメリカの某俳優にそっくりだからそうよばれている。
会は新郎新婦の入場から始まり、飯をバイキング形式で食べながら談笑タイム。その後、新郎新婦への質問があって(どんなプロポーズしたんですか?とか)、最後にBINGOゲームが始まった。
ニコラスさん『Bの8!・・・次Oの79!!』
はじめは粘ってやっていたんだけど、ぜんぜん当たらない。イライラした俺は、全部終わってがっかりする前にこちらからこんなゲームおりてやろうと決意。遅れてきた裕一郎とおしゃべりをしていた。
しばらく話していたんだけど、いつまで経ってもビンゴゲームが終わらない。
・・・・・
・・・・・・え?まだやってるの?
次々と賞をとる人が続出。しかしビンゴはまだつづく。
てか賞品こんなに多かったんだ!今更ながらビンゴを真面目にやってなかったことを後悔した。でも、もうどの番号が今まで言われたのか知る由もないから、再開なんて出来る分けない。
またお酒を飲みながら、おしゃべりを再開。
するとしばらくして、なんか会場の空気が変わった気がした。
ニコラスさん『はい!リョーの10!!』
・・・・・・リョーの10?
『Bの10』なら解るけど、なんでリョーなんだ?
俺は手元にあったビンゴのカードを見た。
・・・・・『10』がある・・・
とりあえず、俺は『10』をチェックした。そして、同時にこんな考えが浮かんだ。
もしかしたら、今敗者復活戦みたいなことをしているのでは・・・?新郎のリョウさんが引いた番号・・あるいはカードにある数字と同じ数字を持っている人は何か特殊な賞がもらえるとか・・・・?
ニコラスさん『・・・・え?と・・・37!37あった人!』
・・・37ある!!俺の手元のカードには37の数字ある!!
しかもこれはやっぱりビンゴじゃない!普通だったらニコラスさんは『ビンゴの人』と聞くはずだ。『37があった人』と聞くということは、何か別のゲームになっているに違いない!
そうなると考えられるのはただ一つ・・・敗者復活戦だ!!
俺「はい!37ありました!!」
いきなり会場が爆笑に包まれた。
ニコラスさん「・・・おまえ、37当たったのか?」
・・・・もしかしたら、俺何か勘違いしたのか?まさみに至っては指差して笑っているし・・・
俺「おれビンゴじゃないんですけどそれでもいいんですか?37当たっているだけで」
会場がさらに大爆笑した。完全に謎である。
俺は怖くなって席に戻ろうとしたら、
裕一郎「行け!!おいしいから行け!!」
裕一郎がこんなことを言ったら完全に危険信号だ。俺は絶対何かをやらかした。一体何を?
そのとき、司会の隣にいた、どっからどう見てもやくざにしか見えない竹さんが、めっちゃ怖い顔をして歩いてくる。なんだなんだ!?
酒井さん「カメラかして。ちゃんと撮るから」
何だ!?はあああああ!!?わからんわからん!!
竹さんが強引に俺の腕を引っ張って新郎のところに連れて行った。超恐わっ!!
もう、わけが解らない。どうなってんだよいったい。
しかし、何よりも最も驚いたのは、次のニコラスさんのセリフであった。
ニコラスさん「はい、ではこれから将樹君と新郎のリョウさんが熱いキスを交わします」
・・・・・・・・はあああああああああ!!!!????????
は!?まさか!!
さっきの『リョーの10』、あれは『10』ではなくて、『リョウ(さん)のチュウ』だったんだ!
俺は聞き間違いをしたんだ!!よりによってこんなことを・・・・!!!
痛恨のミス。こんなに少し過去の俺の耳を呪ったことはない。
謎はすべて解けた。しかし、時は既に遅かった。
気付いたときには、兄貴のごっつい腕が俺の背中に回り、目を閉じたリョウさんの顔が目の前に迫っていた。
ぎゃーーーー・・・・・・・・(心の悲鳴)
感想:意外とやわらかかった